宗教 第三章

 だんは四苦八苦していた。

 状況は悪化するばかりだ。

 いんもうのインターネットでせんじようばんたいの破壊的カルト宗教からの脱会体験記をりゆうらんした。ぼうはあった。みずからカルト宗教から脱会したという青年のブログからいくばくかのカルト宗教脱会組織のホームページにアクセスしてみた。組織がおしなべてひようぼうしているのは暴力沙汰になってはいけないということだ。ならば怎麼生そもさん脱会させればよいのか。めいちようたる情報をしゆうしゆうしているインターネット回線がせつだんされた。インターネット・プロバイダにれんらくすると愛妻がカルト宗教へのろうだんするために解約したのだという。カルト宗教の情報を掌握することさえできない。めんだんの実家にさいはいほうちやくした。宿敵ザ・ニッポニアニッポンだ。鳥類のマスクをはくだつすると臆病ながんぼうきつきゆうじよとしている。いわく〈あの試合の罪悪感で面会にもいけなかったんだけど一旦中越プロレスを休養して全身の治療法をさがしてたんですよで今度はたかさんのおくさんが宗教に嵌まっちゃったっていうじゃないですか〉と。つづけて〈おれたちもにせものの格闘技でこうしのいでますけどねにせものの宗教ってのはもっと厄介ですよ〉と。

 道程がひらけた。

 しやはんいちいちじゆうでんされたザ・ニッポニアニッポンは独立でカルト宗教脱会組織を渉猟しはつらんはんぜいの脱洗脳カルト協会にほうちやくしたという。いんの協会は実際によろず教から十人じようの被害者をきゆうじゆつしている。けんちようらいの精神でザ・ニッポニアニッポンをしんぴようし脱洗脳カルト協会の新潟県支部へとばくしんする。六階建てのビルの四階に位置する事務所にて神主の資格をもつ精神科医である代表が真摯に応答してくれた。いわく〈よろず教というカルト教団はぞんのとおり神道系のカルトでしてに量子力学も教義にとりいれているわけです量子論的に素粒子レベルでの相補性のしゆうれんによってよろず教の信徒だけは理想郷へむかう系統樹上の宇宙へアセンションするというのですが無論たらです〉と。つづけて〈まずは教団に興味があるといってだんさんひとりで施設にむかいますでおくさんをきようどうしてちらの協会が用意した面会室にりましょう最初はおくさんを興奮させないようにだんさんが説得して無理ならばちらの部屋からわたしたち協会員が援助にむかいますなによりも暴力的手法での脱会は目指しません〉といった。

 だんとう所へむかう。

 しゆうふうさくばくたるはいきよを改築したとう所には合宿所が設置されており現在愛妻は合宿所の一棟にいる。百戦錬磨の脱洗脳カルト協会会員である弁護士とともにとう所にほうちやくし〈たか恭子さんにわせてください〉という。つづけて弁護士が〈まんいちよろず教がひんせきする場合監禁罪で起訴します〉というのでとつとつかいたるがんぼうで信徒がきようどうしていった。配管のむきだしになっているはいきよの一室にほうちやくするとはくの壁面がかくやくとしていた。五人の信徒が尊師の摂理をとくDVDをりゆうらんしている。四人は金剛がんぼうでDVDを閲覧しつづけるがだんに勘付いた愛妻は〈尊師様おゆるしください〉と合掌してだんに肉薄してくる。いわく〈あなたも尊師様のDVDを御覧くださいあなたのいのちをすくってくれたんですよ〉と。だんはいう。〈恭子がおれをなおしてくれようと頑張ってくれたことは感謝しているでもいまいちそっちの宗教を理解できないんだはなしあうために一旦おれについてきてくれないか〉と。たまゆらちゆうした愛妻は〈あなたもるおつもりがあればついてゆきます〉という。

 愛妻はなびいた。

 せつはばをいどんだだんにとってはせんざいいちぐうの機会だった。弁護士のしやりように搭乗し脱洗脳カルト協会の設置されたビルにほうちやくするとだんと愛妻だけで事務所に隣接する面会室にってゆく。まで愛妻はえんえんよろず教の教義を説明していた。かいなる卓子と四つのソファが設置された面会室にて愛妻はまつしぐらにひとつのソファに鎮座しまた教義の説明をつづける。〈――だからすべての素粒子には神様がやどっているのでも素粒子様とおはなしができるのはとう者だけとう者になればどんなねがいもかなえられるのあなたも仏教とかにせ宗教に洗脳されてないでったほうがいいですよ〉と。だんは〈神様をしんじないわけじゃないよでもね本物の神様とにせものの神様っていうのがいるんだ〉という。しゆつこつげつこうした愛妻は〈じゃあみせてあげるわたしはこのビルや地面の素粒子ともおはなしができるからからとびおりたって無事なのそれをみたらってくれるでしょう〉といってソファから外壁面のまどに疾駆して刹那もちゆうちよせずにとびおりた。だんようそく阻止する間隙もなかった。

 すべてはおわった。

 たか高次はそうおもった。

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