【コラボ掌編小説】続きスワップbyれんまろ

Lie街

EP1 心ここに在らず

死んだ目をした男がいた。魚の目をした男がいた。

そいつは時折寂しく笑うと、星を見上げる。


「俺はこれからどう生きればいいのか…」

男の声は夜の闇へと呑まれる。

悲観的なことを言っているが男は決して貧乏ではなかった、むしろその逆でかなり裕福な人間であったがその代わりに、心はカラカラであった。

男は昔から友達がいなかった。誰も友達になってくれなかった、大金持ちだと分かると誰もが目の色を変えて男に迫ってくるのである。


何も不自由がない、それこそが男にとって最大の不自由だったのだ。


両親は随分前に他界し、男が裕福な理由もそこにあった。両親が培ってきた富と名誉をそっくりそのまま男が手にしたのである。そんな自分がたまらなく許せなかった、両親が辛い思いをして築きあげたものが一瞬で自分のものになってしまったのがまるで強盗や窃盗と何ら変わらないと思ったのである。


「心に何も無い。カラカラに枯れ果ててしまった」

男は毎日のようにそう呟いていた。

そんな日々を過ごしていたある日、人生の転機(と呼んでもいいだろう)が訪れた。

その日はからりと晴れた空に雲が浮いていて、書斎にいた男の背中を太陽の光が濡らしながらコーヒーをすすっていた時だった。

天井に穴が空いてそこから一人の少女が出てきてこう言った。


「はいかいいえで答えてください。今の生活を全て捨てて私に着いてきてくれますか?」


男に選択肢はひとつしか無かった。

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