第34話 幸せ 〈帰り道〉
素直に嬉しい気持ちとこんな神がかった能力を自分が持っていていいのかという思いが自分の中で入り交じっている。
「そういえば……時間は大丈夫なの?遅くなったらお祖母様達に怒られてしまうわ……」
「ふっふっふっ……もう話は通してあります!!!」
あっ可愛い……天使ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
待ってもう死ねる……
本当に生きる糧……尊い……
「でも僕らの特殊能力を試したらすぐ帰らないとね。」
そりゃあそうか。一国の王子がこんな所に護衛もつけずにいたら流石にヤバいだろう。
「誰から行く?」
「はい!じゃあ私から!……って言っても怪我人はいませんから……どうしましょう……」
「ローズの能力は今は試し用がないわよね……」
ローズはちょっといじけたような表情になったけれど直ぐにぱっと顔を上げた。
「なら僕も試し用がないね……」
ミントも異能力の能力向上だから……ミントのおかげで上がったのか精霊のおかげで上がったのか分からないし……
「じゃあみんな、好きな単語を思い浮かべてくれないかな???」
え〜っとりんごでいっか。
「ん〜みんなも精霊契約しているからか、特に能力は変わんないかな……???僕も普通の人にやらないと意味がなさそうだよ。」
「じゃあ、俺もきっと変わんねぇな。」
「えっと………僕の特殊能力は……ここでは使えないので……」
そういえば……???ノアの特殊能力ってなんなんだろう……???
ノアはゲームで出て来ないからなぁ。
「まぁ、ちょっとずつわかっていけばいいじゃない!」
「じゃあ帰ろうか。」
「「うん!(おう!)」」
暖かい我が家へ。
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馬車に揺られながらふと思い出す。
「あれ………???ライム達……王城ってこっちの方向じゃないよね???」
「まぁまぁ、今日はちょっと遠回りするのもいいかな〜って。」
「……そっか。」
早く帰らなくて大丈夫なのかな……???国王夫妻も心配しそうだけど……???
まぁ予知で見ようとしたら多分わかるけど……本当に大事なことはちゃんと意志に関係なく知らせてくれるはずだし……
「で、なんでここにエミリアが?」
「ラベンダーの家の場所を把握しておきたいなって思って♪貴女達からじゃなくて私からも会いに行けるでしょ?」
確かにそうなんだけど……みんな何か私に隠し事してない?
ふと窓に映る自分の姿を見て少し違和感を覚える。
あ……目だ。何だか紫色の目が少しガブリエルに近くなっている気がする。
そう言えばローズの瞳も……
薔薇のような瞳なのは変わらないがどことなくオレンジに近くなっているというか、そんな感じがする。
ライムもミントも緑が深くなった気がするし、ノアはくすんだ水色っぽくなった気がする。
「ラベンダー、お前薄着すぎ。これ、着とけ」
ロータスが彼が着ていた皮の上着を少し乱雑にかけてくれる。
ロータスは……本当に甘いピンク色の瞳だな……
なんだろう……お菓子に例えるならマカロンだろうか?
ゲームの中のロータスは外見は無邪気な少年だがが攻略対象の誰よりも男らしさがあってヒロインを必ず守り抜くキャラ。
でも、私の目の前にいるロータスはゲームのロータスとは別人なんだなって。
これは他のみんなも同じだけれど。
誰よりも自分に正直で、誰よりも他の人を見ている。その人の本質を理解しているというか……不器用だけど優しくて。
その優しさはたまにお菓子みたいに糖分過多なのだ。
でも甘党な私にはちょうどいいのかもしれない。
やっぱり幸せだな……
「……ありがと。」
こんな時間が続きますように。
神様にお願いをしてみるのも悪くないな。
「あ!お姉様、笑った!」
「だって今……私、幸せだから。」
「ならもっと今日は幸せにさせてあげられるね。」
私が首を傾げるとみんないたずらっ子のような表情を浮かべた。
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