第24話 海を彩る

 僕は浜辺に座ったまま、しばらくの間ぼんやりと海を眺めていた。


おそらく身長30cmの海色の髪の彩を見ることはもうないだろう。


でも、僕はもう彩が誰かを知っている。


僕は鞄から塗り絵と色鉛筆を出した。


僕は今日のページを開いて驚いた。


目の前に広がっている景色と同じだったのだ。


入江の形も湾曲の角度も浮き玉の位置まで同じだったのだのだ。


僕はこの目の前に広がる景色を頭に焼き付けながら色を塗っていく。


深い海の色を表現するため、いくつかの色を重ねる。

まるで彩の髪の色のような美しい深みのある色彩。


空は滲むように軽やかでありながら光と影の両面を孕んでいた。


軽やかに淡いタッチを色彩を変えながら幾重にも重ねていく。

まるで今の僕の心をそのまま表したような憂いを含んだ空、、、。


波打ち際から続く浜辺もいくつかの色を重ねて塗り進める。


すると、そこに地図のような物が浮かび上がってきた。


僕は一心不乱に塗り進めた。


そして、ついに地図の全貌が露になったのだ。


僕は地図の指し示す方向へと踏み出した。


絶対に兄ちゃんに会う!


改めて、そう心に誓った。

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