第15話 衝撃的な出会い
シゲルは自動販売機コーナーの畳二畳ほどの空間にいた。
丁度、この位置から産婦人科外来が見えるのだ。
そちらからは見えにくい角度になっている。
足音が聞こえてくる。
おそらく、先程の電話の女性だろう。
会話の内容からすれば医師か看護師であると推測できる。
足音が大きくなり白衣に身を包んだ30代くらいの女性が通りすぎた。
黒髪を後ろで束ね、身長はスラリと高く見えた。
彼女が産婦人科外来の部屋へと入っていくと、微かではあるが話し声が聞こえた。
20分もしないうちに白衣の彼女が部屋から出て急ぎ足で、もと来た通路を歩いて行ってしまった。
忙しいのだろう。
その後、産婦人科外来の部屋から出てきたのは40代くらいの小柄な女性だった。
紺色のロングスカートにベージュのブラウスを着ている。
そして先程の人物とは逆方向に、ほとんど駆け足で消えていった。
その女性はすぐに戻ってきた。
先程と同じように駆け足だった。
そして再び産婦人科外来の部屋へ入ると、
マスクをして黒い帽子を被った女性を連れて出てきた。
僕は目を凝らして帽子の彼女を見ていた。
下を向いているため、顔がよく見えない。
おまけにマスクまでしている。
だんだんと彼女達と僕の距離が近くなる。
距離にして5メートルくらいの所まできた時、帽子の彼女がふと顔を上げた。
その時、僕ははっきりと確信した。
この女性、いや、少女は “ 彩 ” と何らかの関わりがあると。
なぜなら彼女の目は驚くほど彩と似ていたのだ。
切れ長の美しい一重まぶただった。
二人はゆっくりとした歩調で僕から遠ざかっていった。
やがて彼女達の姿が僕の視界から消えると、僕は大きく息を吐いた。
緊張から解き放たれた瞬間、喉がカラカラであることに気づき、自動販売機に硬貨を入れた。
何を飲もうか迷っていると、不意に後ろから話しかけられた。
「ずいぶんとかくれんぼが下手なのね。」
僕はボタンを押そうとしていた手を止めた。
いや、正確には止まっていた。
全身が硬直したようになった。
しかし、僕はなんとか振り返ることができた。
そこにいたのは、先程の白衣の女性だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます