第13話 導かれた先に、、、。

 階段を上がり1階ロビーに出ると相変わらず混み合っている。


シゲルは人混みが苦手だ。


1階は後回しにしようとエレベーターの方に目を向けると、視界に彩の姿があることに気がついた。


彩!!


いつものように海色の美しいロングヘアにサクラ色のアイシャドウ、カラフルなドレス。

そして、身長30㎝程の小さな体。

目立たないはずがない。


しかし、誰にも彩の姿は見えていないようだった。


彩は僕と目が合うと、くるりと体の向きを変え走り出した。


彩!!

、、、、、待ってくれ、、、、、!!


僕は彩の後を追った。


人混みを縫うようにロビーを突っ切ると内科横の廊下を駆け抜けた。


廊下の長椅子に座っている人々が僕を見る。


僕は人にぶつからないよう気を付けながら、彩の後を追った。


気がつくと、先程までの人混みが嘘のように静かな場所に来ていた。


薄暗く、誰もいない。


そして、彩の姿も見失ってしまった。


ここはどこだ?


僕のすぐ右横には “ 備品室① ”と書かれた扉があるだけだ。


真っ直ぐ突き当たりには2階へ続く階段が見える。


僕は彩を探すのを諦め、2階へ行こうと歩き出した、、、その時!!


人の声が聴こえてきた。


女性が電話で誰かと話しているような感じだ。


それは “ 備品室① ”から聞こえてきているようだ。


僕は階段へ向かうのをやめ、備品室①の前を足音をたてないように通過し、その曲がり門に身を隠した。


なぜ、そのような行動をとったのか自分でもわからない。

まるで何かに突き動かされているみたいだった。


声は先程よりもはっきりと聞こえた。


「男の方は北海道に逃がしたわ。ちょうど函館に私の別荘があるからそこに、、、。

アヤカは知らないわ。今は仕方ないわよ。

それと、これからはアヤカのことは “ かおり ” って呼ぶように。

ええ、もうニュースでも報道されてる。

今は私達があの子とお腹の子供を守るのよ。

これから、あの子の診察をするわ。

時間がある時にゆっくり。じゃあ。」



北海道、、、アヤカ、、、お腹の子供、、、。


僕の脳内でバラバラだったパズルのピースが少しずつではあるが、あるべき場所にはまっていくような感覚があった。


僕は電話の女性が備品庫から出てくる前に、産婦人科外来へと急いだ。

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