第3話

ピピピピピッピ………


断続的なイラつく様な機械音が意識を浮上させる。



「・・・もう少し寝かせろや」



その瞬間、ビシリッと何かが零れ落ちる感覚が走り、慌てて細く絞る様になんとか抵抗をする。



「わ、たたたた、ちょっと勘弁!!大丈夫かコレ!?壊れては・・・・・・・・・いない」



フゥ、と安堵の声が漏れると同時にこの呪いのデメリットを痛感する一方、もう何度か実はこんなやり取りを繰り返してしまっている、朝が弱い自分に辟易としながら、スマホを手に取る。



「セーフセーフ、あっぶねー、まーたデータが全部死ぬ所だった」



前に一度この寝起きの悪さでこの呪いの抵抗に失敗した時には、データが全部死ぬ所まで行ってしまった。



「あー、今回は目覚ましのアプリが消えただけか、良かった」



朝からヒヤリとさせられる事で、とても二度寝と行くわけにはいかなくなった。


それにどの道今日はやる事があるのだ、手早く支度を済ませなければいけない。


もう昼で、腹が減っているがギルドに向かうがてら、腹ごなしも済ませてしまう事にしよう、定食屋で手堅く和食か、いやいや、洋食だって行きつけの所にゃ美味いのがあるだろうし、腹は既に朝食をいれてないせいか悲鳴が聞こえる程だ。

服は動きやすいジャージで構わないだろう。

そう考えながら、身支度をした後リュックを背負って家を出る。


だが結局、ギルドについてしまうまで、ずっと昼食について悩んでいて決まらなかった。



「ようこそいらっしゃいました!冒険者互助組合連合蒼海町支部です!今日は如何なさいましたか?」


「あ、どうもっす、いつも世話んなってます。コレ依頼の納品書とブツっす。」



そう言いつつスマホをレジ・・・っぽい機会の隣に置いてある読み取り版の上に置くと、ギルド登録している俺の会員情報が機械の画面に映し出され、確認される。



「はい!いつもご利用ありがとうございます冒険者の東さんですね。今回は何時もの様に依頼の達成の納品と報酬の受け取り、ダンジョンでの資源の買い取りでよろしかったでしょうか?」


「うっす」


「かしこまりました!ではあちらのダンジョン買取のカートに収まる場合は無料となりますが、それ以上の場合につきましては有料での鑑定になってしまいますがよろしかったでしょうか?」


「あ、カートで収まるんで大丈夫っす」


「何時もありがとうございます、東さんの採掘する鉱石、素材等はギルドに持ってこられる際、下処理が行われているので何時も助かっております、今後ともよろしくお願いいたしますね?」


「お、ありがとうございます、そう言っていただけると幸いです、こちらも鑑定後の買い取りに色を付けてもらえるので有難い限りっす!」



そういうとギルド店員さん、ちづるさんは、笑顔で片手を上げ、ぱたたと疑音が聞こえそうなぐらいで手を振って下さり見送ってくれた。


あぁ~美人の受付嬢さんに惚れる冒険者達の気持ちがわかるんじゃ~~~。


浄化されそうなぐらい気持ちが上向いた所で、鑑定に回す為、バッグからカートに鑑定用のアイテムを移すと、最後にカートを指定のレールの上に乗せると、まるでトロッコの様に運ばれて行く。


そしてそのままガラス張りの様な金庫、というべき専用の場所へと移されていく、そこまで見送った後、今日のは対して大きい額の鑑定のものはないので、鑑定所へとは足を運ばずそのまま任せ、スマホに吐き出されてくる時間と金庫の番号を確認し、相違がない事を確認した後、30分待ちとの事なので、折角だし、とギルド内のフードコートを見て回る。


運が良ければ、新鮮なモンスターの可食部で作られた料理が食べられる、と物色すると、カウンターのおすすめ商品である花糸王鳥の卵サンドが何と無しに目に入り、そのまま食品の危険度ランクを見るが特に危険性はなし、他に危険性なしの同じ様なサンドイッチを目に付く限り買い込み、お茶を買った後席に着き、片手でサンドイッチを食べ偶にお茶を飲みながらスマホでお買い得な品が入っていないか、確認しながら時折買うべきもののメモを見て予約———札付きにしていく。


この札付きにした中からオークション形式で値段が釣り上がっていくタイプの売買がギルドでのデフォルトである。


人気の素材や魔石はどんどん元の所有者が希望した額から跳ね上がっていくが俺の買うちょっとした素材等の下級品は基本其処のギルド内だけで取引される所為か殆ど値が動くことはない、それほどまでの価値がないしほっとけば誰か別の奴がすぐに出品することがあるからだ。


ギルドでオークションを介さずに固定で売られているものもあれば月に一度は開かれる本部も交えた大きなオークション等、正しく冒険者をサポートする組織だとこうしたちょっとした機能をつかっているだけでこの機能を当たり前にした先人達の努力には頭が下がる。


例えば、地域の人気店も協力している飯屋は、冒険者がその日狩ってきたり採って来たりした中から作られるから絶品だし、神秘もほんの僅かながら得られる。まぁ勿論普通のダンジョン産じゃないものでも作られているから常に一定はあるが人気だからすぐ売り切れる。


倉庫の管理は空間拡張や魔術防護壁、神様の加護が掛かっているからとても広い。


ギルド内ではスマホにギルド公式のアプリを入れ冒険者登録した際のIDでログインすれば便利な機能が使えるっていう所だろう。


その機能はダンジョンオークション、買い物、依頼受諾、情報掲示板、ダンジョン探索機能など多岐に渡る。


もはや冒険者には必需品だろう。


中にはスマホじゃなく別の端末に移したりしてる冒険者もいるとか、掲示板でみかけたのはバイクに取り付けたAI付きの高級マシンなんてのもやってる奴がいるがまず高位の冒険者だろう、少なくとも中級以上だった・・・。



なんて、考えながらスマホを操作していると、どうやら鑑定が終わったらしく、スマホに鑑定の内容と値段の内訳と詳細が贈られてくる、全品で——————。



「21万2千円かぁー」


首の後ろを掻きながら、やはりモンスターを避けながら、採取をしてまぁ、今回のは大学帰りの浅いダンジョン潜りだったとはいえ、一回の稼ぎにしては、十分過ぎる程だが、命の対価としては低い。


それでも、ソロのダンジョンで約二十万は、多いと思うかもしれないが、実情はこの中から使った道具やメンテも加わってしまうので、実際の収入はこの三分の一程。


大手の【クラン】に入っている奴ならまた違うのだろうが、生憎、こんなデメリット持ちとパーティーを組んだ日にゃ、漏れなく全員運が軒並み最底辺へと突き抜ける。


それもこれも原因は、【悪神の恩寵】という名の呪いが掛かっている為だ。


俺にこんなもんがふっついている理由は、やはり俺の実の両親の事と何か関係があるのだろうか?と考えているのだが、ぶっちゃけ、呪われた理由なんぞ分からん!神はなんとも気まぐれであるらしく、この前もニュースでむしゃくしゃしたのでむしゃむしゃしてやったとかで凄い事件が起こってたらしいし・・・呪いを付けたのも案外そんな理由だったりするのだろうか?


後、運が無くなる的な意味でダンジョンで宝箱に出会った事がない…のは他の冒険者の人もありうるので兎も角。


他の神様の加護を受けようとすると発動、運があがるアイテムを持とうとすると発動、他の魔法による付加も発動、ともかく、俺に作用するものに関してほぼ作用すると言ってもいい、これに関しても、何がセーフでアウトなのかは、自分でも良く把握しきれていないのが実情だ。


これでダンジョンでモンスターを倒しまくって経験値でも入って魂の格とやらが上がっているならばともかく、そんなに倒せるはずもなく、何故というべきか自分の体ではそんな様子は表れていない。


普通ならば魂で感じれるとかなんとかいうけど・・・わっかんないなぁ。


ギルドのステータスプレートもサポセンにいって神様に【更新】してもらわなければ変わらない。


だからジョブのレベルと違い明確な違いは自分には分からないので、魂の格をみるならば神様に視てもらう他ない・・・レベルが上がるのも、これだけやっていれば、一レベルぐらいは上がってそうだが、他の冒険者曰く、感覚で分かるみたいだが、一回も経験したことがないので、俺は呪いの所為だろうと睨んでいる。


これで神様みたいに何でも分かればいいのだが、そんな事が自分に出来るわけもなく、まぁ、仕方ないとそのまま一通り詳細に目を通すと、そのままギルドの直売所に降ろす旨の売却ボタンをタップする。


基本オークションには出さない、何故なら俺は大学生。自転車操業ですからして、即金ではないと生きていけないのである。


そうしていると今度はすぐに依頼に関しての報酬のメッセが飛んでくる。と、全ての品質が良質以上ならば依頼料を上乗せしてくれるという何とも今時珍しい律儀な依頼人だそうで、額が1.2倍という好条件。


自分が評価される事が嬉しく思い、【錬金術】関係の事で12レベル以下の依頼があれば出来る限りまた受けさせていただきたいと返信し受諾。


丁度昼飯も食い終わり、ギルド内で予約したものを買いに行ったり、他にもまだ見つけていなかった品を補充し、武器、防具の販売所にちらりと目を向けようと思ったが、今はとても手が出ないと思ったので、やめた。


さて、腹ごなしもやる事もすんだ、次はサポセンに向かってジョブレベルの更新試験を受けようか。

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