第39話 追跡する艦隊

『たった今、南鳥島に空爆があった模様。  ・・・現在、怪物の様子は確認できていません。』

海底火山の噴煙に似た光景。

それをモニターを通して見ている、空母フランク・ハワードの管制室。

「どこの連中か、分かるか?」

『それでしたら、調べは付いています。 “国家復活戦線”の一派、D.M.Zという戦闘

攻撃機のみで編成された、テログループです。』

「日豪合弁企業を襲ったやつらに間違いない。 オーストラリア政府の依頼通り、

全機撃墜を目指す。くれぐれも、EMP弾対策を怠らないように!」

『艦長、それでしたら、もう少し様子を見ましょう。』

「・・・それもそうだな。」


空爆で発生した濃い煙が、海風によって払われようとしていた。

滑走路を含む、島全体に散乱している金属片の数々。

「・・・どうなっているんだ?  確かに直撃したはずだ。」

『バンカーバスターなのに・・・怪物はおろか、島には穴一つ開いてないです。』

『でも、隊長の一発が効いているかも知れないじゃないですか!』

『だったら、俺が確かめてやる!』

島上空を旋回飛行していた編隊のうちの一機が急降下を開始した。

「よせ、ヒョンギ!!危険だ!!」

『大丈夫ですよ、隊長! パッと撃って、パッと逃げますから!』


南鳥島の中央に、ただ立ち尽くしている『海烏野郎』と呼ばれたレイザービル。

今の所、動きらしい動きを見せてない。

そして、上半身部分のウニのような鋭いトゲは依然として逆立ったまま。


「え・・・? まだ来るのか!」

煙が払われて・・・ 戦闘攻撃機編隊は飛び去った、と思っていた秀太。

だが、視界に入ってきたのは・・・

こちらに低空飛行で向かってくる、一機の戦闘攻撃機。

その下部からチカチカと、細かく鈍い光の点滅。

すかさず、PCの画面を撫で払う少女。


「目つきがキモいんだよーーっ!! このカラス野郎ーーっ!!」

戦闘攻撃機の30mmバルカン砲が火炎放射器のような音を立て、火を噴いた。


レイザービルの頭部付近で瞬く、数々の火花。

銃撃を仕掛けた戦闘攻撃機が付近を通過しようとした、その時。

硬い地面に鞭を思いっきり打ちつけたような大音響。

通過した戦闘攻撃機は島の沿岸で大爆発を起こした。

海上に落下していく、その残骸。


『!!?』 『ヒョンギーーッ!!!』

『・・・・何があったんだ・・・?』

「作戦は失敗だ! 撤退する!!」

『でも、隊長・・・!!』

「命令だ!! いったん帰還し、体勢を立て直す!!」

一機を失った戦闘攻撃機編隊は、レイザービルを追跡していた艦隊にも気付き、

鉢合わせしないよう迂回するコースを取り、去っていった。


空母フランク・ハワード管制塔内。

艦長デヴィッド・ソロモンと、WO-PARTSのCEO、ウォルター・オブライエン。

「ふん、テロリスト共め、気付いていたか。」

「提督、我々はレイザービルを追いましょう。」


空母の甲板には、無尾翼機の5機編隊が待機していた。

濃い紫色の機体には、V.V.Vというロゴがペイントされている。

その後方には・・・

ざっと、25mの長さはありそうな {何か}。

しっかりとカバーに覆われていた。

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