第5話 やけに生々しかった夢

( あの丸い物は何だ? )

その物体が天井の照明だと理解できるまで、かなり時間を要した。

不意に、フラッシュバックするように、今まで見ていた夢が記憶から

引き出された感じがした。


霧がかかった向こう岸へ渡ろうと、川の浅瀬に足を踏み入れ・・・

すると、いきなり後ろから襟首をつかまれ、引き戻されてしまった。

「渡ってはダメだ。」

転ばされた張本人、見知らぬ誰かの足元が見えた。

黒い革靴、ビロードのような光沢がかった黒いズボン。

視線を徐々に上へ向けると・・・

やけに足長の、その上は白いワイシャツ。

長袖を腕まくりした、筋肉隆々な二の腕。

顔は、どうやら白人系らしいが、顔中にびっしりと生えたサンタクロース

のそれに近い白ヒゲ。

丸いメガネをかけていて、光の反射か何かで、どこを見ているか、青い瞳

かどうかは分からなかった。

頭髪も白く、オールバックにして後ろで束ねているように見えた。

「元気が出るぞ。」

そう言って、その白ヒゲの老人(?)は手に持っていた何かを少年に差し出した。

少々大きなカップに並々と入っている赤い液体。

トマトジュースはあまり好きではなかったが・・・。

何故か、喉が乾いているような気がして、飲まずにはいられなかった。

体の芯まで染み込む感じがして、何となく心地よかった。

白ヒゲの老人(?)は微かにうなづいていたような・・・。

夢はそこまでだった。

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