第4話 情報屋

 私の耳が良いのはお分かり頂けたと思います。私はそれを利用して、様々な情報を集めて必要としている人に渡す、『情報屋』のような事をしています。

 情報って、「拙速せっそくもって」「過不足無く」「適切な相手に確実に届ける」のが、必要な事だと思ってますから、すごく選別やスピードに気を使ってます。






 そんな私が情報屋のような事をし始めたのは、ある事がキッカケでした。


 その日、放課後の他の同級生たちのお喋りに、何とはなしに耳を傾けていた時でした。私は一人帰り支度をしていて、ちょっと離れた所に同級生3人のグループがお話をしていました。その中の一人の子は、ある男子に告白をしたいと友人に相談していたのです。


「何かプレゼントと一緒に告白するといいンじゃない?」

「でも、プレゼントって何を渡したらいいのよー」


 そんなお話が聞こえてきたので、私は帰り支度を済ませてから、その相談してる同級生たちの隣をすれ違いながら、ちょっとしたアドバイスを呟きました。


「その男子、アーモンドが好きって言ってたそうだから、プレゼントするなら、そういうのを使ったお菓子とかいいんじゃないかしら」


 普段はあまり喋らない私からの、突然の語りかけ。当然不審に思ったでしょう。こう返答が来ました。


「それって誰が言ってたの?」

 その相談していた子に、眉根をひそめて言われてしまいました。


「ただの噂よ、噂」

 私はあさっての方向を見つつ返答してお茶を濁し、そのまま足早に教室を出て玄関に向かいました。





 それから数日後、その告白する子はアーモンドを使ったお菓子『フロランタン』をプレゼントしつつ、告白をしたと聞きました。私でも聞いた事のある、有名店のお菓子だったそうです。


 そのプレゼントは男子の心を掴み、いたく気に入って、見事にお付き合いする事になったそうです。





 大変だったのはそれからでした。


 どこから発生したのか、「水織みおりにアドバイスを受けると恋愛が成就する」なんて噂が立ってしまい、私の所にはたびたび恋愛相談が来るようになってしまったのです。困ったモノです。


 アーモンドのお菓子を渡すアドバイスをしたのは、その男子が以前にアーモンドが好きと話していたのを聞いていたからでした。私の耳は、そういう会話も聞いていたからこそのアドバイスでした。


 そこから発展して、色々な情報を提供する『情報屋』として、スクールカーストの外側に立つ事が出来ました。それは私にとっても良い立ち位置でした。人間関係に煩わされるのもイヤでしたからね。





 そこからのお話は、また追々して行きますね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る