第11.5話  番外編ちょっとしたお話

         番外編




「え、セレナ、カイン様と交換日記することになったの!?」

「すごいじゃん!カイン様、よく折れたわね!」

セレナは女性使用人部屋で他の女性たちと一緒に話をしていた。

どうしたら日記書いてくれるようになるか、戦略を立てることに協力してくれたメイドの女性たちだ。

「やっぱり、当主様の注意よりも、セスティーナ様のお言葉が聞いたのかしら?すごく強烈なことをカイン様に言ってたから」

「そうねー、セスティーナ様にはまだ完全に逆らえ切れてない感じだもんね、カイン様って」

「けどさ、けどさ、何よりも気になるのはカイン様の日記よ!どんなこと書いてたの?」

女性たちはセレナに距離を詰めて問う。

カインの日記は添削後はカインが持って帰ったので、正確には覚えていないが

主に不満なことを書いていたはずだ。

「不満なこととか?」

「・・・・それだけ・・・・?」

頷くセレナ。それに反して、拍子抜けだったのか、メイド達はあからさまにガッカリした様子だった。

「なあんだ、てっきり、あんたたちが恋仲にでも発展してたのかと思ったのに」

「あんたの日記見ても、同じメイドだから、日常を書いてるだけの日記読んでてもねー」

「かと言って、カイン様の日記は日本語だから、メイドの私達が見てもわかんないしねぇ」

「カイン様、なにお考えなのか気になってたのになー」

とメイドの女性たちから密かに噂されるのだった。






一方のカイン。

彼は自室の机に座り、書き始めて日が浅い日記を日本語で頑張って書いていた。

(うーん。これ以上書くことがないな・・・)

けれど、これじゃあ日本語の勉強にもならないし、何よりもセレナにまた、

「少ないです!」

と怒られる。

(あいつはどうして、あんなにスラスラと書けるんだ?)

セレナは日々のお屋敷の生活のことを毎日書いていた。

最初より少し行数が少なくなってカインがセレナの日記を添削する作業が軽くはなったが、まだまだ自分よりも多く書いているのだ。

そして、気になることに、

『〇日、今日はコック長から新作にオレンジプディングの味見をさせてくれた。

 ○日、執事のセインから皿洗い頑張ったご褒美にチョコレート貰った。

 〇日、ユーナから・・・・・・・etc                 』

と毎日の様に書かれていたことをカインは思い出した。


(アイツ・・・・・・。この屋敷で餌付けさせられてないか?)



後日。

「セレナ」

「はい、何でしょう?」

「手、出してみろ」

セレナは身を潜めて後づさりした。

また最近の出来事で、カインから同じように手を出したらバッタを渡されたことを思い出したのだ。

「ちがう、イタズラしないから」

恐る恐る手中にだす。

カインが「休憩中に食べろ」と、渡されたのは袋に入ったマドレーヌだった。

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあな」

カインはそう言って部屋を出ていく。



セレナは勿論このことを日記に書いてみた。

翌日、その文を添削のために読んでいたカインは、「うん、よし!」と頷いていたのだった。

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