触ってもイイのよっ

しおん(shion)

第1話 車いすのわたし

毎年のこと、春のひとときに桜を見に出かけるのは恒例のこと。


春休み、上の娘と下の息子と一緒・・・、

そしていま・・・、

わたしの車椅子を押してくれるのは、この春に高校に入る姪っ子。


自宅から街の本通に出ると、古くからのお寺が8軒連なってあります。

お寺にお参りにされる方以外に、いくらかのほどなく観光客が歩いている。

観光地でもナイ、この街にって不思議・・・。


ある日のことです。

地元の人じゃない? 数人の子供を連れたグループに、お寺の門の前で出会った。

その子供たち、わたしの娘よりも下かなって感じで、その中のひとりの男の子が

「おばさん、そんなのに乗ってどうしたの?」でした。


「おばちゃんねっ、上手に歩けなくなる病気なんだっ」

わたしの車いすを押してくれてる姪っ子が、

「珍しいんだ 車いすって はじめて見るの?」

「見たことはあるよっ でも、それは病院の中でのこと・・・」

と、話しかけられた女の子がいった。


遠巻きに見ているわたしより年上の男性がひとこと

「その人 見ちゃダメだぁ~ さっ、急ごぅ~」って、

子供たちの手を引いて去っていった。


こんなこと、初めてじゃない・・・けれど~~~

いつも思うことは、数年前にはじめて車いすに乗った日のこと。

「その人は 見ちゃダメ!」と、

わたしの車いす姿を見て、子供に声を掛けたわたしより年上の夫婦の言葉。


でも、その子・・・男の子は興味ありそうにじっと見てた。

わたしの娘が、

「わたしのママにとって この車いすはみんなの足と同じよ」と・・・。


キョトンとしたその男の子、両親に手を引かれて行ってしまった。


たかが車いす、されど車いす、障がい者・下肢不自由な人にとっては、

とても必要なモノなのに、そのことが健常者には分からないみたい。


「珍しいと思うなら、触らせてあげたい」

あの時の出来事があったから、そう思えるようになった。


だから、「触ってもイイ!?」と聞かれたら、

「いいよ~」と、答えられるようにしている。

 

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