専業作家であること

デビューしたのが2011年5月なので、もう9年経ってしまっているんですね。その時すでに連載を2本もっていたこともあり、専業作家としてそれなりに食べてゆけるようになりました。毎年、小説や解説書を2作から6作を刊行し、連載やったりマンガ原作やったり、手広く物書き仕事をしてきたわけです。


小説家の中には書くのがつらい人や、遅筆の人や、いろいろ執筆に問題を抱えた人も少なくない中で、ずっと書くのが楽しくネタに詰まることもなく書き続けてきました。これだけ長く同じ仕事を続けたのは人生で初めてかもしれません。大学を卒業してから長くても7年くらいで仕事を変えてきました。


ふつうは「止める理由がないから続ける」発想の人が多いようなのですが、私は「続ける理由がなくなったら止める」発想の人なので企業人だった時も自分の役割が終わるとさっさと辞めていました。潔いとかそういうのではなく、飽きてしまうんですね。自分の役割が終わっても同じ仕事を続けるのってつらくありませんか? 「愛情の冷めたあとに理性で戻るなんてぞっとするだろ」というのは私の好きなマンガの中の台詞ですが、仕事についても全く同じ感覚を持っています。


なんでこんなことを書いているかというと、商業で書くのが楽しいのかよくわからなくなったせいです。死ぬまでに残された時間と貯金や生活の状態を考えると無収入でも死ぬまで足りるだろうし、だったら商業で書く意味はなにかというと編集の方や出版関係者と「本」を作り上げるのがおもしろいからでした。


結局、私にとっての仕事のおもしろさはおもしろい人たちと見たことのない景色を見ることにつきるのであって、おもしろい人がいなくなるとおもしろくない。


商業でない方におもしろい書き手や読み手がたくさんいるような気がして、だったら商業をやる意味ってなんだろうとか考えています。まあ、ようするに『大正地獄浪漫』と『義眼堂』が刊行されて気が抜けているというだけかもしれないんですけど。


 

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