砂漠の太陽は熱く、そしてとても強く光り輝き、さらさらとした美しい砂の大地の上には、すごろくとこまの影がくっきりと映し出されていた。

「砂漠というのはの、この世界でもっとも清からな風の吹く場所なんじゃよ」すごろくは言う。

「清らか?」

「そうじゃ」

 そう言ってすごろくは嬉しそうな顔で笑った。

 こまは透明はオワシスの水を眺めて、それから、この世界でもっとも清からな風を感じようとして、顔を上げたのだけど、残念なことに今日の午後の砂漠には、風は吹いていはいなかった。

 こまの見える世界は永遠の黄色い、あるいは少しオレンジかがった色をした砂漠の大地が広がっていた。海よりも広い砂の大地。

 砂漠にはなにもない。

 今、こまたちがキャンプを張っているオアシスのように、とても小さな点として地図上に奇跡のように人が一応生活していける場所も存在しているが、それは本当の本当に奇跡のような場所であり、広大な砂漠に比べるとあまりにも小さな小さな命のための聖域だった。

「どうして砂漠は清らかなの?」こまは言う。

「砂漠には今の人が忘れてしまった昔の神様が住んでいるからじゃよ」

 ふぉふぉ、と笑ってすごろくは言う。

 それからすごろくは、にっこりと笑って、こまの頭を優しく撫でた。

 砂漠の発掘隊を率いるベテランの発掘士であり、また地下資源に詳しい世界でも有名な砂漠の科学者でもあるすごろくの手は相変わらず、すっごくごつごつとしていた。

 こまはそんなすごろくのごつごつとした手が、本当に本当に大好きだった。

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