34話

 何度かコキノレミスに往復してもらい、状況が把握できてきた。この部屋はどこまでも石棺が置かれており、冷風が吹いている。キクノスによれば、石棺の中身を冷やすためだろう、ということだった。中身が何かまではさっぱりわからないらしい。

 ステノとキクノスの面倒は山小屋の親父が見ていて、食料もまだある。俺も分けてもらっている。ただ、そんなには持たない。

 あと、別の場所に弓使いもいた。ただ、全身動かなくなっており、意識があるかもわからないようだ。とりあえず山小屋の親父が、口から水を流し込んでおいたとのことである。

 コキノレミス達の前に現れた時、氷リザード(ステノ命名)は無傷だったとのことだ。別個体という可能性もあるが、おそらくは俺が会うよりも前だったと考えられる。そして、弓使いを最初に襲ったのではないか。だんだん、魔法の威力が小さくなっているように感じる。

 氷リザードは、この部屋を守っていると考えられる。人間を発見して、動けなくするのが役割だ。俺と会った時は簡単に撃退できたことから、魔法を使うごとに弱体化しているのではないか。

 山小屋の親父は、別のところにいたので助かった。タフな男だが、モンスターと戦うとなればプロとは言えない。

 となれば、結論は一つだ。

「コキノレミス、言うとおりにしてくれ」

「えっ、うん」

 目の前に盤と駒を準備し、言う通りの局面を作らせる。

「なぜかお前は盤術を使える。俺は、そこにかける」



「はっはっは、一人だけ動けるというのも大変だね!」

 あれから、かなり時間がたった。みな十分には飲み食いできていないが、山小屋の親父はまだまだ元気そうである。

「色々任せてすみません」

「いいってことよ。困った時はできる人間ができることをする。それがここのルールだ」

 コキノレミスは素早く動いてくれるが、力仕事は向かない。親父には荷物を運んでもらったりしている。キクノスも簡単な魔法なら使えるようになったということで、水を温めて持ってきてもらったりしている。とにかく冷えるのだ。

「おそらくトカゲの目的は、生きているものを動けなくして熱を発生させなくすることです。だから、二人が元気でいる限り、もう一度来るはずです」

「なるほど」

「正直、俺は召喚兵を満足に操れるかもわかりません。だから……」

「ふりそすっ」

 とてもタイミングが良かった。


ザッザッ


 あの時と同じ、床に砂袋を叩きつけたような音だ。現れたトカゲ男は、顎に傷があるがほぼ完治していた。個体も同じとみていいだろう。

「自由、返してもらわなきゃな」


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