第一章 5話

その後各々は午前の訓練を終え、施設から少し離れたカフェテリアに集合した。

「なんで私達が国王の護衛なんかしなきゃいけないの!?」

今季限定の苺のサンドイッチを口に含みながら、眉間にしわを寄せたセザンヌは、納得がいっていないよう。

「さっき説明されてたでしょ?だから... 」

「ちがうのユー!私は戦場に行きたいの!」

紅茶を手に取ったまま、唖然とするユージラを横目に、頬を膨らませるセザンヌは、駄々をこねる子供みたい、いや、犬か。

「でもさ、ほら、スペア国ってお菓子が有名じゃない?ね、ボルネシア。」

「そうだったね、確か、国王はラズベリーのパイがお好きだったんじゃなかった?」

「そりゃあ、お菓子は好きだけど...」

「あと、招く人も多いだろうし、料理もあるんだから、食べ放題じゃない?」

ニヤリ、と笑って見せると、セザンヌは不機嫌らしからぬ笑みで足をバタバタさせた。

彼女に大きく左右に振られたシッポが見える。


「今日はとりあえず、明日の準備をしないとね。」

書類に目を通し、計画を立てる彼女は、施設一、高い頭脳を誇る。

「ま、護衛だけなら容易なことだね。」

ユージラの持つ書類をちら、と見て呟いた。...セザンヌが言っていることはあながち間違いではない。

街中にアンドロイドが現れることはまずないのだ。警備を厳しくしているものだから、戦場に出てくることがほとんどである。

まぁ、バレていないだけかもしれないが...。

つまり、可能性の低い中での防衛。私にとっては休暇のようなもの。

そんな余裕が、のちに悲劇を生むのだろう。


「なら今日は、ゆっくりするとしようか。」



こんな休日、次はないだろう。

今は、苦味の濃い珈琲を一口飲み、女だけの会話を楽しむとしよう。

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