第20話 身代わりの盾

 シグレ Lv.9 Human

 称号:下っ端

 異能:1/10

 ■HP 12/121

 ■MP 8/79

 ■攻撃力 61

 ■防御力 49

 ■素早さ 35

 ■魔法耐性 10

 ……


 ■炎耐性 9

 ■氷耐性 9

 ■雷耐性 9

 ……


 目下、ルーシアと飯を食いながら作戦会議をしていた訳だが、ふとステータス画面を開いてみると俺のレベルが上がっていた事に気付いた。

 そうか。ゴリラと野犬、それからバトルウルフをルーシアが倒した時、一緒に戦っていた俺にも経験値が獲得されたんだな。ありがとうルーシア。ルーシア、マジルーシア。

 初心者にとってはかなり上位のモンスターを倒した甲斐あって、レベルが数段も上がったのは僥倖ぎょうこうと言える。称号も“下っ端”に変わっているし。HPもようやく三桁台に突入したようだ。まぁ、異能<1/10>のせいで、最大HPは実質“12”なんだけどね。

 難易度が“EASY”だったら、雑魚モンスターの攻撃を一撃か二撃くらい耐えられそうだけど、残念ながらバトルウルフやグリフォンが出てきた今、基本ワンパンで殺される事には変わりない。

 そう言えば……。あ、アレが装備できるのか。


 テーブルに肘をついて窓の外を眺めていたルーシアだったが、俺が独り言を呟くと訝しげにこちらを見ていた。

 レベルが上がった今、俺は装備できるアイテムが増えた事を思い出した。以前酒場のオヤジに貰った餞別で、レベルの制限で装備できなかったモノがあったのだ。俺は装備画面を開いて、その装備へと換装する。


「なに、ソレ?」


「知らないのか?」


 俺が装備した盾を、胡散くさいものを見るような目でルーシアは見ていた。一見何の変哲も無い盾である。鉄製のようで硬度はそこそこありそうだが、サイズは小さく、やや心細い。確か西洋の小盾でバックラーっていうのがあったと思うが、概ねそんな感じの印象だろう。

 ルーシアはこの盾を知らないみたいだが……そうか、ガンナーだと装備できないから知らなくてもおかしくないか。戦士系のクラスのように、前衛で戦う人間にとっては結構有名なアイテムだと思うんだがな。


「“身代わりの盾”っていう防具だ。これを装備しておくと、瀕死の攻撃を受けても一度だけダメージを無効化する事ができる。一回発動すると消えちゃうから消耗品なんだけど」


「ふーん。何個もあれば便利なアイテムね。一個しか無いの?」


 俺はイスに座ったまま、左手に装備された小盾をコン、と拳で叩いてみせた。軽めだが、金属的な音が小さく響いた。

 レアなアイテムではないのだが、有用性の高い代物だ。ただ、アヌビスゲートをプレイしていくと、より強力な効果を持った防具が多く手に入る為、身代わりの盾を好んで装備している中級者以上のプレイヤーは少ないのが現状だ。それに、フィールドやダンジョンで割とカンタンに入手出来るので、ありがたみは薄い。だからこそ、あのオヤジも俺にこれを譲ってくれたのだろう。


「そうだな。残念だが一個しか持ってない。それに、攻撃を一回無効化できたからって――」


 ルーシアの問いに答えた俺はそこまで口にして、何か重大な事を見落としているような気がした。俺の説明を興味が無さそうに髪を弄りながら聞いていたルーシアだったが、彼女の動きもまたピタリと止まる。俺達はお互いに顔を見合わせると


「「これだッ!!」」


 二人同時に声を揚げたのだった。

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