17 雪遊びの日 世界はいつもきらきらと輝いている。

 雪遊びの日


 世界はいつもきらきらと輝いている。


 十二月に美月と真琴くんの住んでいる小さな街に雪が降った。今年の初雪だ。美月は真琴くんや勇気くん、絵美ちゃんと一緒に教室のみんなで雪遊びをして遊んだ。(それはすごく楽しい思い出になった)


 冬の日の出来事


「美月ちゃん! いくよー」

「うん!」

 美月は友達の絵美ちゃんとそれからあと数人の教室の友達と一緒にお昼休みに学校の校庭で雪合戦をして遊んだ。

 遠くでは真琴くんが勇気くんたちと一緒に雪だるまを作ったりして遊んでいるみたいだった。

「勇気くん!」

 絵美ちゃんはそう言って、ときどき勇気くんに手を降った。

「おう」

 勇気くんはそう言って、(顔を雪で赤くしながら)笑顔で絵美ちゃんに手を振り返した。

 そんな絵美ちゃんの横にいて、美月はときどき、絵美ちゃんと同じように、勇気くんの隣にいる真琴くんにその視線を向けた。

 すると真琴くんは美月の視線に気がついて、よう、とその口だけを動かして美月に言った。(それから真琴くんにはにっこりと幸せそうな顔で笑った)


 兎の世話も順調だった。

 もうだいぶ二人とも(真琴くんは最初から兎の世話がうまかったけど)くろとしろの二匹のつがいの兎の世話をするのに慣れていた。

 くろは最初に見たときに比べて、だいぶ元気になった。

 もうほとんど全快と言ってもいいと思う。その証拠にくろはずっとしろと一緒にいて、二人はとても仲むつましく、いつも一緒に小さな兎小屋の中で遊んでいた。


 一月。


 勇気を出して。


 冬休みが終わると、一つの嬉しいニュースがあった。

 それは美月と真琴くんがずっと世話をしていた兎小屋に関するとても良いニュースだった。

 どうやらずっと、梅子先生ができれば来年も兎小屋を残して欲しい。

 来年もこの桜南小学校の生徒にこのくろとしろというつがいの二匹の兎の世話をして欲しいと、ずっと職員会議で発言してくれていたようだった。


 秋の兎ブームも追い風となって、(あとは、もしかしたら今年で定年を迎える梅子先生立ってのお願いを校長先生が聞いてくれたのかもしれないけれど)兎小屋は取り壊されることはなく、来年も、美月や真琴くんや、六年二組のみんなが卒業してからも、この桜南小学校の校庭の隅っこみ残されるようになったのだった。


「よかったね。真琴くん」

 しろに水をやりながら、美月が言った。

「ああ。本当によかった。梅子先生に感謝しないといけないな」ともうすっかり元気を取り戻したくろの頭を撫でながら、優しい顔をして真琴くんが言った。


「でもさ、くろ。元気になってよかったけど、結局くろは心の病気だったのかな?」

 もうすっかりと寒くなった冬の帰り道に、いつもの土手の上のところで美月が真琴くんにそう言った。

「わからない。でも、くろは元気になったんだから、くろは病気だったとしても、その病気に勝ったってことなんだと思う」

 ポケットに手を突っ込みながら歩いている真琴くんがそう言った。


 真琴くんは遠くの空を見ていた。

 吐く息は白い。

 もちろん、美月の吐く息も真っ白だった。(なにせ今は冬なのだ)


「雪。また降るかな?」

 もうすっかり解けてしまった雪のことを思い出しながら美月は言った。

「どうかな。でももし降ったとしたら、またみんなで雪遊びしような」と真琴くんはにっこりと笑ってそう言った。

「うん。今からすっごく楽しみ!」にっこりと笑って美月は言った。

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