おまけ1 異世界の車窓から


 ギャグ度 強め

 カット理由 本編とのすり合わせの都合&ページ数削減


  ◆ ◆ ◆


≪異世界の車窓から。前編≫



 目的地へと向かう電車の中で、茶島は思った。


「先生のトランクって、何入ってるんだろう?」


 思えば、先生のトランクが開いているタイミングは少なく、見たところ金色の何某が入っている様子しか見えない。


「大事なトランクだってのは……知ってるんだけどなぁ」


 好奇心が有れば、人は見ずにはいられないものである。


 茶島はこの時のため、先生がトランクを開ける時に使うダイヤルの番号を密かに盗み見ていたのだ。


 『ミッション』の目的地へと向かう汽車の客室の中、先生とタマモちんは食堂車に出ている……つまり……


「先生のトランクを開けてみるなら、今!!」



 トランクのダイヤル錠は茶島の手により開かれる。そして、その中から現れたのは……張り紙だった。


『勝手に開けたようだね、茶島くん。

 そんな君に罰を与えることにする。このトランクは勝手に開けられてから三十分後に爆発する。

 ただし、次の問題を解いてこの張り紙にかき込めば爆発しないから頑張っ


「うぉああああああああ!! マジかよ!! ちょ、ま、捨てようこんなの!!」


 そして、車窓からトランクを投げ捨ててから、彼は気づいた。



「……ああっ!! 大事なトランク!!」



 ◆ ◆ ◆

 

≪異世界の車窓から。後編≫



「大丈夫ですかね? 茶島さんは」


 食堂車でフルーツキッシュに舌鼓を打ちつつ、タマモちんは先生に言った。


「何がだい?」

「好奇心でトランクを開けてないでしょうか?」


 先生は勝ち誇ったように微笑みながら、紅茶に口を付ける。


「あのトランクに張り紙をしておいたんだ。ちょっと脅し文句を添えておいたが、実際に爆発だとかしないし、ちゃんと座学とかしてれば解けるような簡単な問題を張っておいただけだから、ちょっと驚くだけで終わるはず……」

「あー、投げますね。それは」


 タマモちんの言葉に先生の表情が固まる。


「え? いや、投げるって?」

「トランクが爆発するなら、車窓から投げ捨てるかと……」


「……いやいや、いやいやいや、いくら何でも……あのトランクが大事だってことは茶島くんも分かって」



 と、その時、車外を何かが音を立てて流れていくのが、彼らの目の脇に映った。

 他の客が口々に言う。


「おい、今の何だ?」

「あー、トランクだな。誰かが車窓から投げ捨てたんだ」

「あぶねぇなぁ」

「あのトランク、もう回収できないな」



 タマモちんが食後の紅茶にジャムを浸しながら言う。


「投げましたね。茶島さん」



 異世界の車窓から

 了



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