またとない褒美

 『だいいち奴らは俺自身に頭を下げているんじゃない……俺の地位や肩書きに頭を下げているだけ』……『天 天和通りの快男児(福本伸行、竹書房、敬称略)』で、暴力団組長の原田がそんな主旨の台詞を述べていた。個人的な記憶につき細部はご寛恕願いたい。
 主人公の雇い主もまた、絶対に口にはしないだろうが、胸中では原田のごとき気持ちを味わっていたのだろうか。一杯のコーヒーは主人公を通じてのささやかな反抗かもしれない。