第九話

あ、忘れてた。


目の前でハァハァ言いながら倒れ込んでる二人にお茶でも用意しないとな?なんて思ったら、勇気がペットボトルのお茶を用意してくれてたよ。


「なんか体動かさないと気持ち悪い。訳わからないならとりあえず動けなんて、父さん昔言ってたよね?」


そんな話良く覚えてるよななんて言いながら、勇気の頭をごしごしなでていていると、目の前で倒れ込んでた二人が落ち着いてきたんで、今まで疑問に思っていたことを聞いてみたんだ。


Q:イデアが本当に魔法が使えると思ったの?

A:目の前であんな不思議なことが起こったから、魔法の可能性があるって思った。 魔法の国の出身の彼女にも可能性があると思ったからやってみた。魔法のかばんの説明書に魔法の使い方が書いてあったから可能性は高いと思ったけど半信半疑だった。まぁ、成功したら彼女の自信になるし、使えなかったら笑いの種にすれば良いと思った。


Q:魔法の言葉すんなり言えてたね。覚えてたの?

A:後ろのホワイトボードを指さし「書いといた」


Q:イデアにゲームの世界についてあまり説明しなかったのは何故?息子にも口止めしてたよね。

A:移動する世界が、実在しない世界だと知ったら、移転の魔法が失敗する可能性が高まるかと思った。


Q:移転時、やたら慌ててたけど?

A:イデアの魔法力が切れたら怖かったから。途中から余裕があることがわかったから、あとはどれだけ移転できるか?を試してみたいと思った。


Q:説明書に何か書いてたけど、あれ何?

A:イデアが魔法を使える事が書いてあったのと、良く見たら、封印を解いた人向けの説明書があり、特典として2つ何かを付けれるという事が書いてあった。移転の魔法の説明には「術者が知っている場所に移動できる」「術者と術者が手を繋いでいる対象者が魔法の対象となる」としかなかったから、「術者が知っている <または、術者が目にしている> 場所に移動できる」と書いておいた。もうひとつの特典も書いたら受理されたらしく、何か光ったから大丈夫だと思った。



「なんでそんなに冷静なの?魔法だよ?ゲームの中に入っちゃったんだよ!母さん!よく見たらイデアさん耳とシッポはえてるし!ここはゲームの世界じゃないんだよ!」

「んな事言っても、目の前でおこっちゃったんだか仕方ないっしょ!ほっぺたつねって痛いから夢じゃないっしょ?もうありのままを受け入れるしかないよな。つーか、これって夢か?」


なんて二人でギャーギャー言い合いながらほっぺたをつねりあったんたけど、やっぱり痛いんだよね。


「ま、まぁ。いきなり世界が滅びる事はないだろうし、生きてれば魔法のひとつやふたつみれるもんだよ、たぶん」

「いろいろ無理やりすぎだよ父さん…」

「ま、なんだ…。ここにあるゲーム何か一つやってみる?」

「まぁ~興味あるけどいいの?」


なんて言って息子を自室に追いやる俺。

正直、これ以上混乱させることは避けたいし、うるさいだけだからな。

今は勘弁しておくれよ息子や。

それにしても、今日の俺は最高にひどい親だなぁorz



☆ ☆ ☆



さてさて、話を戻して・・・

魔法のかばんの中身はどうかな?

実はカミサンに相談されてたんだよね、かばんの事。

まさか本気だと思わなかったから、架空の話だと思ってこうだったら面白いかな?なんていろいろ話してたんだけど、こりゃとんでもない事になりそうだ!ワクワクが止まらないよ!


俺が提案した事は魔法のかばんの内容について。

魔法のかばんにモノを大量に出し入れ出来るのは良いことだけど、移動した先で使えないものが出てきても意味がないから


『移動先で使えるものが出てくる。例:日本で使えるお金を魔法のかばんに入れ、異世界で取り出すと、異世界で使える同額の通貨が出てくる』


なんて事提案したんだよ。

まさかゲームの世界のお金を利用するなんて事は思ってなかったんだけど、これって本当どうなるんだろう?実際のお金に変わったら面白いよなぁ。


ま、失敗しても笑いの種にすればいいか!なんて呟いたら、カミサンと目が合ってついつい笑っちゃったよ。やらないよりやったほうが良い。失敗しても楽しく行こうぜ!ってお互い思えるのって本当に嬉しいよ。


さて、結果はどうかな?


「イデア。かばん重くない?何が入ってるかわかる?」

「いえ、全然重くないです。奥様が言ってくださった通り、鞄の中身は手を入れると頭に浮かんでくるので、何か取り出したいものがあったらおっしゃって頂けますか?」


そう言ってくれたイデアの目の前に、俺は日本の通貨を並べていく。


100円硬貨 500円硬貨 1000円札 5000円札 1万円札


1円、5円、10円、50円を並べなかったのは、失敗してお金が1円しか出てこなかったら泣けるなぁ~という、俺のちっちゃい抵抗からだからなんだけどね。


「これが日本のお金なんだけど、こんなの入ってるかな?」

そう言うと、イデアは1万円札を指さして

「この紙が束になっていっぱい入ってるのと、丸くて銀色のものと丸くて茶色いものが少し入っています。その上に数字が書いてるので、たぶんそれがお金になると思うんですけど、私にはわかりません。申し訳ありません」

「だからね、わからないことは恥でもなんでもないんだからそんなにしょげないの!わからないなりに相手に伝えようって思ってくれることがとってもありがたいことだから、こっちも嬉しいんだよ」


なんて事を言って、イデアに表示されている数字を書いてもらう。


良かった・・・アラビア数字だ。

くさびがた文字みたいに訳わからない文字だったらどうしようかと思ったよ。


えっと、4599999000???


いちじゅうひゃくせんまんじゅうまんひゃくまんいっせんまん・・・えっ?それ以上? あれっ?なんか多くない?

カミサンも固まっているよ。


「おかしい・・・おかしい・・・1G1円だと思って、だいたい一千万円くらいあれば御の字だと思ったのに、桁が違い過ぎる!ナンデナンデ?!」

「ユキ!人の事言えないけどさ、口に出てるよ口に!!」


あれっ?本当にわからなくなってきた。

ちゃんと書いてみよう。


4,599,999,000


いちじゅうひゃくせんまんじゅうまんひゃくまんいっせんまん


四十五億九千九百九十九万九千・・・






よ、よんじゅうごおく????!!!!!!!!!!!!!!!!!!






うん、



もう一回見てみよう。





うん、







よ、よんじゅうごおく????!!!!!!!!!!!!!!!!!!

よ、よんじゅうごおく????!!!!!!!!!!!!!!!!!!

よ、よんじゅうごおく????!!!!!!!!!!!!!!!!!!




えっ?うるさいって?

ああ、うるさいさ!

でも今くらいは叫ばせてくれよ!





だってだって四十五億だぜ!ぉぃ!!!!!





すぱぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!


うわっ!痛てっ!!思いっきり靴で叩きやがった!!!!


わかったよ!わかった!落ち着くから…落ち着くから…ちょっと待ってくれ…




(一時間後)





ま、まぁ~


たとえば子供銀行券みたいなオチだったらそれも面白いなぁ。


ん?一束出したって?


間違いない


本物のお札だよ。


透かしもあるし、いつもさわってる感覚と一緒。




モノホンの一万円札だよ!!!!!!!!!!!!!!!!




しかも帯封までしてある。




帯封の金融機関は?「MEGAMI BANK」だって。




女神銀行??




ハハハハorz





もうツッコんだら負けだと思うから、あえて見ない方向でひとつ。


45億9千万円なんて、俺知らないですよ!!





ホントウニ


カミサンも知らないよね、ね、ねっ!


あとは、このお金が使えるかどうかだよな。


うん、気が付いたらお昼だし!


イデアの服や身の回りのものも買わないといけないからさ、ちと買い物でも行こうか?


・・・本当に使えるのか? これ?

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