第2話 二ヶ月後

 ファミレスでバイト始めて早二ヶ月。


「ほれ、何度も言うが……」

「本当はダメ」

「よろしい」


 キッチンスタッフの河野悟こうのさとるから余り物を貰い、本日のバイトを終える。


「そんなにお金ないのかい? 新井って大学生だったよな」

「ええまぁ……」

「大変だろうけど、頑張って」

「河野さん……」


(あー、優しい人だ。本当に)


 着替えて真っ先に家に帰る。

 玄関をガリガリする音を聞き、呆れながらもドアを開けると──。


「にゃああああ……」

「こらティア。またドアをかっちゃいたな。それはダメって何度も──」

「ご主人ぅ……お腹へったー」

「…………はいはい」


 玄関で倒れ伏すティア。自慢の白い尻尾は力なく垂れている。


「ほら起きろ。そこで寝てたら……」

「……? 汚れる?」

「邪魔で入れない」

「ひどーい……」


 渋々避けるティアを尻目にキッチンへ向かう貴紀は、ファミレスで貰った余り物をレンジで温める。


「ごしゅじんー」

「もう少し待っててな」

「焼肉ぅー」

(うちに焼肉する余裕はない!)


 お金がない。だから余り物を貰って、それをティアのご飯にしたりと工夫して生活しているのである。


「ティア、肉たべたーい」

「また今度な。今日はほれ、ハンバーグ定食で使うソースを掛けた猫まんまだぞー」

「いやー。最近の晩御飯そればっかー。ご主人と同じご飯がいいー」

「そんなこと言われてもなぁ……」


 現在ほぼ一文無しで、バイト代が出るのはあと四日も先である。

 ティアが急成長したお陰で、食事に衣類やらで大量に諭吉がお星様へ……。


(くっ、給料日が遠い……っ)


 バイト代が入れば、取り敢えずこの不憫な生活から少しは好転する。


「我慢だティア! 俺も一緒に我慢するから頼むっ!」

「にゃ……ご主人ぅ……」


 涙の懇願。

 ティアは割と賢いためか、現状この家に金がない事はなんとなく察していた。


「ご主人、よしよし」

「……ありがとうな」


 よろよろと立ち上がったティアは、貴紀の頭に優しく手を置く。

 どっちが飼い主なのか、そう訊いてみたくなる光景だった……。

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