第34話:事の顛末

 獣人族の王城にマギー、アイザック、アメリアが集まりアース王国で起きた事の顛末を聞いて居た。


「何とも凄い魔法を所持して居たのだな」


 アイザックが飽きれたように声を出した。


「そうですわね、魅了の魔法だけでも持つ事を躊躇ってしまう魔法ですのに、聖なる魔法でしたか・・・そのような未知の魔法すら所持して居たとは思いませんでしたわ」


 マギーもマデリーンが持って居た魔法に驚きを隠せて居ない。


「だが魅了の魔法に掛かるなど王族としては未熟だな」


ウィルは魅了の魔法に掛かる事は無かった。


 ひとえに防御魔法を習得して居ただけでなく、心底アリスを虐げて居ると噂されて居る彼女マデリーンを許せなかったのだ。


「マデリーンの亡骸は、どうなるのでしょうか」


 心優しきアリスは罪人となってしまったマデリーンが晒されるのでは?と思い問いただした。


「アリスは優しいな。アース国からの報告ではマデリーンは無名墓碑では有るが埋葬されるそうだ」


「無名・・・」


「流石にヴァカス様を誘惑し、王太子妃になろうとした事実は残るからな」


 アリスは複雑な思いを抱いた。


 彼女の証言で断罪され魔の森へ放置された、とは言え一度は戸籍上の妹になった女性・・・。


 その彼女が無名の墓碑に埋葬される事を不憫に思ったのだ。


「アリスフィーヌ様が気に病む事は有りませんわ。貴女様は犯しても居ない罪で国外追放されてますのよ?未だに、追放は間違いで有ったと宣言されてませんわ」


 アース国からの報告に「アリスフィーヌ嬢に下した国外追放の処分は、ヴァカスが魔法に支配されて居た故の間違いで有り、追放は無効で有る」などの文言は、入って居ない。


「あ・・・」


 謝罪が有って然るべきなのに謝罪が無い。


 勿論、王が暴走して居た事の事後処理に追われて忘れて居る可能性捨てきれない。


 とは言っても追放から1か月は経過して居て、暴走から2週間は経過して居る。


 忘れて居るにしては思い出さないのが不思議な状態だ。


「私からアースへ問うてみよう」


 そう言いだしたのはアルフレット。


 未来の王や王妃たちに会話を任せる形で見守って居て、ようやく口を開いたのだ。


「父上がアースの王を一度は脅して居るのですよ?簡単に書状を受け取ってくれるか否か・・・」


「何もギルヴィアに出すとは言っておらん。レンシル殿に出すつもりだ」


 ああ、それなら受け取って思い出してくれるだろう、とウィルもアリスも安心した。


「では、マギー様、アイザック様、アメリア様、集まって頂き感謝いたします」


「いや。アースが機能して居ない状態では我らも動きようが無い。こうして獣人の王城で会議できる事が有りがたい」


「そうですわ。わたくしたちはアリスフィーヌ様が無事で有り幸福な婚約を結んで頂ける事が嬉しいのですわ」


「ヴァカス様が断罪なさり魔の森へと追いやった時は魔法で殺してやろうかと思って居ましたもの」


 危ない発言をしたマギーでは有るが、それくらいアリスの断罪が許せなかったと言う証拠でも有る

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