第21話:思惑の打破に向かって

 対策を完璧に整えた王族たちは、それぞれの城へと戻り準備を整える。


「ギルヴィア王が暴走するとは・・・な」


 この言葉を発したのは魔族の王。


 アイザックからアリスが冤罪で追放された事は、知らされて居たからこそ、国のトップたる者がよこしまな感情を持ってしまった事が信じられないのだ。


「父上、用意は整いまして御座います」


「では一番、遠い我が国から出立しよう」


 アリスを守る為、そして万が一に備えて軍を動かす事にしたのだ。


 魔族は戦闘に置いて、どの種族より強さを発揮するからでは有るのだが、先代のアース王との約束が有る為に戦争を自分たちから起こす事は無い。


 だが、戦争が「起きそうな場合」は別で有った。


 現代のアース王が先代王の約束を反故ほごにし、私欲で動いた場合は魔族の軍を動かす事を許可する・・・と約束には記されて居る。


 それ故の出立だ。



* * * *


 魔族が軍を動かし始めたと同時刻、天族はアリスが滞在して居る屋敷周辺の守りに徹する手配を整えて居た。


 羽を有する天使と言う種族故、屋敷の屋根で遠くから来るで有ろう軍勢を見渡し、注意喚起する事に長けて居るのだ。


「それにしてもヴァカス王子だけでなく、ギルヴィア王馬鹿だった・・・と言う事なのか?」


 マギーの父も呆れた言葉を発するしか出来なかった。


「判りませんわ。ですがアリスフィーヌ様がウィル王子と婚約した、と通達が有って直ぐの通達。婚約を結んだ事が引き金になったとしか考えられませんでしょう?」


「そうだな」


 少数精鋭をウィルソン邸に派遣し、最悪の事態を回避するべく情報網を敷く。



 * * * *


 その頃、エルフ族は牽制する為に街道に居た。


 エルフ族は弓が得意。


 戦争が勃発してしまった場合の足止めとして、弓部隊をウィルソン邸へ通じる道と、獣人族王城に通じる道に配置する事になって居る。


「アメリア様、宜しいのでしょうか。このように待ち構えるなど・・・」


「えぇ、良いのよ?戦争では無いですし、この待機は万が一の対策だわ。アース王が賢い王ならば軍隊を動かす事をしないでしょうが、今はアリスフィーヌ様を奪還したい、と言う思惑に支配されて居るらしいのよ」


「「うわぁ~・・・馬鹿だ・・・」」


 苦笑を漏らしながらも街道に目を向け、何事も起きなければ良いなと気を引き締めて居た。




 * * * *


 何も知らされて居なかったアリスにも、アース王がよこしまな思いに支配されてアリスを奪うべく動きそうだと言う知らせは届いて居た。


「何たる事だ。賢王と呼ばれた先代王と比べたくはないが、何とも愚かな王となりおって・・・」


 ウィルから説明を受けたマシューが、思惑に捕らわれてしまった王に対して、愚かだと吐き出して居た。


 アリスは王によって再び辛い思いをしなければならないのか、と青ざめて居る。


「心配するなアリス。君を守るべく全ての王族が結束し、君を守りアース王の邪な思いが愚かで有る事を立証できるだろう」


「ウィル様・・・一体、何をなさろうとして居るの?」


「それはね・・・」


 教えられた事柄を聞いたアリスとマシューは「確かに目を覚ます事は可能だな」と思える計画に安心できたのだ

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