第16話:本宅と別邸の差

 呆けたままのエヴァンスを無視し、動き始めたマシューが目撃した光景は、無残にも家具や調度品が無くなってしまった本宅の有様だった。


「何と・・・派手に売り払って、ドレスやら宝石やらを買いあさっておったのか」


 飾られて居たで有ろう絵画が有った壁には何もなく、アイリスが使って居たで有ろう部屋からは一切の品が消え失せて居る。


エヴァンスあやつには慰謝料を払えぬでは有ろうが請求しておこう」


 アリスの自室と使って居たで有ろう部屋は、マデリーンの部屋として変更され、趣味の悪い壁紙と内装になって居て気持ちが悪い。


 壁紙、床、天井、ベッドが全てピンク色。


 天蓋てんがいかろうじて白色では有るが目がチカチカしてしまいそうになる。


「これは酷いな・・・アリスフィーヌが使っておった頃は、落ち着きのある壁紙で、居心地よく過ごせたが、これでは・・・」


 居続けると目を悪くしそうだ、と判断したマシューは魔法を使い壁紙の色を緑、床を茶色、ベッドを木目調の色へと変更した。


 アリスの居室だった場所の品も全てが売られ、何もない状態と化して居た。


 勿論、アリスのドレスとして作られて居た品はマデリーン用へと変わって趣味が悪い。


「アリスフィーヌは一体、何処で生活をしておったのだ?」


 そこへ獣人城で保護されて居たルーカスが単騎で戻って来た。


「マシュー様!?」


「おお、そなたはアリスフィーヌ付きの従者ルーカスではないか!無事だったのだな?」


「はい。アリスお嬢様もご無事で御座います。国外追放となっております故、屋敷に戻る事は出来ませんが、マシュー様の領地ならば向かう事も可能かと」


わしの領地は獣人の国だと言っても良い場所だ、アリスを迎えるには十分で有ろう。無事に儂の養女になる手続きは受理して貰った。アリスの荷物を馬車で運ぼうと思い、部屋を探しておるのだが・・・」


「・・・アリスお嬢様は・・・別邸として建てられ、物置として使われて居た空間で寝起きしておりました」


「何だと?!その指示はエヴァンスが行ったのか!?」


「残念ながら、その通りで御座います。マデリーン様を娘として扱い、食事も抜かれ、ドレスも取り上げられておりました」


「何たる事か!あやつめへの慰謝料は一生涯、掛からねば返せぬ額を請求してくれようぞ!!」


「アリスお嬢様の荷物を用意いたしますので、少しお待ち下さいますか?」


「いや、儂も一緒に行こう」


 ルーカスが案内して行く先は、アリスが追いやられてしまった別邸。


 魔術で綺麗にして有るが生活感など、微塵も無いくらいに寂しさ満載だ。


「こんな場所でアリスは・・・毎日、暮らしておったのか」


 質素な造りの室内、置かれて居る品々はアリスが持ち出せた唯一の品のみ。


ドレスは1着も置かれておらず、アリスが動きやすさだけを重視して作り上げたらしきワンピースがベッドの上に置かれて居る。


 彼女が冷遇されて居たと知るには十分すぎた

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