第25話:飛鳥の思いつき…。

春の連休前の実力テストも終わり、明日からゴールデンウィークが始まる。

ここは飛鳥の部屋。

飛鳥が学校へ行く準備をしていると、スマホの着信音が鳴った。


「はーい。」

「あ、千春先輩、おはようございます。」

「飛鳥ちゃん、今ドコです?」

「私はまだ部屋でガッコ行く準備しています。」

「そか、ほな、天王寺駅で待ち合わせしぃひん?」

「あ、いいですね。」

「ほなあとで。」

「はい、天王寺着いたら電話しますね。」

「はーい。」


と言って二人は電話を切った。


そして飛鳥は、制服に着替え、翠の作った朝ごはんを食べ、いつもよりは早い時間に家を出て、停留所に向かい、到着した電車に乗り、天王寺へ向かった。

飛鳥を乗せた電車は、天王寺駅前に難なく滑り込み、他の乗客たちにもまれながら、

飛鳥もホームへ降り、駅員に定期券を見せ、いつもの地下街へ降りて行き、

御堂筋線ホームへ急ぎ足で行くと、改札前には、既に千春が笑顔で待ってくれていた。


「先輩っ!!はぁはぁ…。ごめんなさい、途中、一部の道路が混んでて…。」

「いやいや、いいよ。さぁ、学校行こっか。」

「はい。」

「ねぇ?」

「何ですか?」

「今日、朝から僕を呼び出した、ってことはさ、何か話しでもあるんでしょ?」

「ななな、何でそれを?」

「それくらい分かるよ。」

「だって飛鳥ちゃん、単純だもん。」

「はぁ~…、エリカさんも響香ちゃんもみーんなすぐに私の考えてることわかるんやもんなー…。」

「で、何だい?言ってごらん?」


と、2人は、いつもの天王寺駅構内を歩きながら話しをしていた。


「あ、あの、先輩!」

「んー?」

「そ、その、今度また、デートして下さいっ!」

「あぁ、デート?うん、いいよ。」

「ほ、ホンマですか?!うわーい!やったー!」

「で、ドコ行くか決めてるの?」

「や、それはこれから決めます。」


と、そんな話をしていると、後ろから聞きなれた声で、「悠生さーん!」と言う声がしたので、振り向くとそこには、鈴原が笑顔で立っていた。


「おっはよー。」

「あ、おはよう。」

「あ、鷹梨先輩やないですか。」

「や、やぁ、おはよう。」

「何なに~?2人で登校デートでもしてたんですかぁ~?!」

「や、そ、それは…。」千春は喉を詰まらす。

「わ、私たち、ちょっと寄るトコあるから、鈴原さん、先行っててくれるかな?」


「わっかりましたー。邪魔者は退散しますー。」


そう言うと鈴原はさっさと学校に向かってしまったので、飛鳥が思い切って千春にこう言った。


「ねぇ、先輩?」

「何?」

「北口のマクドで朝ごはん食べません?」

「え?でも、もう時間そんなに無いよ?」

「いいじゃないですか、今日はガッコ、フけましょうよ。」

「え、えぇー??!!あ、飛鳥ちゃんって、そんな子だったの?」

「わ、ち、違いますよー。私だってガッコさぼりたい時もありますって。」

「そりゃそうだろうけど、単位は?飛鳥ちゃん、単位は足りてるの?」

「はい、もちろん。先輩は?」

「取れてるよ?」

「ほなサボりましょうよ。」

「サボってどうするの?」

「そうですねー、ジャンカラが開いたら、カラオケ行きましょう。」

「カラオケかー。そういや、難波で藤坂さんと初めてお会いした時から行ってないんだよね。」

「でしょでしょ?私もです。だから今日は、フリータイムでガッツリと。」

「ま、まぁー、たまにはいいか。」


と、2人は、静かなところで学校に、今日は体調が優れないので休む、と伝え、

2人はマクドに入り、窓から外の見える席に着き、美味しそうにハンバーガーをほおばっていた。


そして、午前11時前になり、それまで約2時間半ほどマクドで会話していた2人は、

マクドがある通りの少し向こうにあるジャンカラへ入ると、店員が応対して来た。


「学生、2名様でよろしいでしょうか?」

「はい。」


「学生証の提示をお願い致します。」


と言われると、2人は揃って鈴ヶ丘の学生証を提示した。


「お客様はジャンカラのアプリ会員は入られていますでしょうか?」

「あ、はい、入ってます。」

「あ、ぼ、僕も。」


と言われたので、2人とも慌てて学生服のポケットからスマホを取り出し、

赤外線の機械にタッチした。

「機種のご希望はございますか?」


と言われたので、飛鳥がすかさず、「LIVEDAM STUDIAMでっ!」と言うと、店員は、「かしこまりました。」と言い、部屋番号のプレートを渡し、部屋番号を伝えると、2人は嬉しそうに手を繋いで部屋に向かった。


部屋に着いた2人は、とりあえず、「ふぅ~…。」と、ため息を付いて、

「ね、ドリンクでも取りに行こうよ。」と、千春から言われたので、「そうですね。」と、飛鳥も答え、2人一緒に部屋を出て、ドリンクを取りに行った。

そして、部屋に戻った2人は…。


「さて、何から歌おうか。」と、千春。

「ん~そうですねー。あ!先輩?」

「何だい?」

「メイデイの歌、LIVEDAMには、55曲も入ってるんですよ!」と、飛鳥が言うと、

「そ、そんなに入ってるの?」と、千春。

「でもまだこれ少ない方です。他のもっと昔からの有名な中華歌手なんて、100曲以上とか、ざらに入ってますから。」

「そっかー、じゃあ、その、飛鳥ちゃんお得意の、メイデイの歌から聴きたいなー。」

「って、えぇー!私からですかぁ?!」

「うん。」

「普段、メイデイの歌は、まこちゃんや響香ちゃんの前でしか歌わへんしなー…。ま、いっか。」


と言い、千春にリクエストを求めた。


「先輩、何かリクエスト、ありますか?」

「そうやなー…、んじゃ、神戸で歌ってくれた歌の原曲が聴きたいな。」

「恋愛ingですか?いいですよ?」


と、飛鳥が言うと、飛鳥は、手馴れた手付きで、デンモクの、中華曲の中から、五月天と検索し、恋愛ingをタップして、メロディが流れて来たので、飛鳥は、独学で学んだ流暢な北京語で、メイデイの歌を歌いだした。


そして…、


~♪戀愛i-n-g happy i-n-g

心情就像是 坐上一台噴射機

戀愛i-n-g 改變i-n-g

改變了黃昏 黎明 有你 到心跳到不行

[黃昏 黎明 整個都戀愛i-n-g]

未來某年某月某日某時某分某秒某人某地某種永遠的心情

不會忘記此刻l-o-v-e

l-o-v-e!l-o-v-e!

l-o-v-e!l-o-v-e!


戀愛i-n-g happy i-n-g

心情就像是 坐上一台噴射機

戀愛i-n-g 改變i-n-g

改變了黃昏 黎明 有你 到心跳到不行

黃昏 黎明 整個都戀愛i-n-g

…戀愛ing~♪」


と、歌い終わると、そのポップで軽やかなメロディと、飛鳥の歌い方に、

聴き惚れていた千春が、大拍手を送った。


「す、凄い凄いっ!僕、北京語の生歌なんて初めて聴いたよっ!それよりなにより、飛鳥ちゃんの北京語の上手さに勘当したよっ!」


と、千春が、飛鳥を褒めると、飛鳥は、「えへへへ…。」と、片手を後頭部に置いて、照れるそぶりを見せた。


「ね、ねぇ、飛鳥ちゃん?」

「ん?何ですか?」

「ね、せっかく誰も居ない部屋だし、さ、き、キス、せぇへん?」

「キスですか?いいですよ?」


と言うと、2人は目をつぶって、飛鳥は、千春の唇を受け入れた。

それは、甘酸っぱくて、長い長いキスだった。


そして、キスをしている最中。

飛鳥のスマホにどこからか電話が鳴った。


「も~ぉ、誰よぉ~…?今、いいトコだったのに~…。先輩すいません、ちょっと電話出てもいいですか?」

「あ、う、うん、いいよ。」


「もしもーし?」と、飛鳥は珍しく少しキレ具合で電話に出た。


「やほー!だーれだっ!!」と言う、電話の向こうの女の子が問いかけた。


「あ、もしかして、まこちゃんっ??!!」

「ピンポーンっ!!」

「今ドコなん??」

「今ドコて、あんた、東京に決まっとるやないか。」

「そ、そやったな。忘れてた。」

「そうゆうあんたこそ今ドコなんよ?後ろ、えらい音楽流れてるけど。」

「あ、それはー…。うーん…。」

「なんやねん、ハッキリ言いぃなっ!!」

「今はジャンカラやっ!」

「は?ジャンカラ?あんた、今日ガッコ違たんか?」

「えと…、なぁ、その電話の向こうって、お父様とか浩兄、藤坂さんとかおらん?」

「おらんおらん、今、撮影の休憩中やしな。」

「そか、なら話してもいいけど、ぜぇっったいに、お父様や浩兄には言わへん、って、約束してくれる?それやったら話す。」

「お、おう、え、えぇで?ウチも女や。聞いたろうやないか?」

「今朝な、天王寺駅でな、先輩と待ち合わせてな、ガッコサボって今な、北口近くのジャンカラでフリータイムで歌ってんねんっ!!」

「は?な、なんなん?それ。それって、どーゆう…。あんた、とうとうガッコサボる子になってしもたんかいな?」

「そんなんちゃうちゃう。たまには気分転換でも、て思てな。」

「それだけちゃうで?」

「何がやねん。」


と、2人の会話が盛り上がる中、スタジオの中からスタッフの大きな声がして、


「真琴さーんっ!出番でーすっ!」と言われたので、

「あ、はーい、今いきまーす。」と、声色を変えたので、飛鳥は思わず笑ってしまった。

「な、なんやねん、今の聞いたコト無い声色は。」

「え、えぇやないか。ほなウチ、撮影戻るから。」

「あ、うん。」

「また話し聞かせてやー!!」と言って、飛鳥と真琴は電話を切った。


そして、電話を切ったジャンカラのボックス内では…。


「ねぇ、飛鳥ちゃん、電話、誰からやったん?」

「え?あ、あぁ、まこちゃんからです。」

「楠木さん?」

「えぇ。」

「仕事はどんな感じだった?」

「何か、疲れてるような感じでした。」

「そっか、大変だね、女優さんも。」

「あ、そうや!!」

「ん?どうかした?」

「今日、金曜やし、夕方から新幹線乗って、私、東京行きますっ!」

と言う、飛鳥の大胆発言に、千春は、

「は?」

と、一瞬フリーズして、「え?えぇ~~?!!」と大声を上げた。


「な、何でそうなるのさ?」

「や、だって、まこちゃんと久々に会いたいし。それに、浩兄にも。」

「ひろ…、にい、って?」

「あぁ、うちの長男で一番上の兄です。」


…、時間は、お昼の12を少し回ったところで、鈴ヶ丘は今、お昼休み。

エリカは、クラスで仲良くなった追川らと、ランチを楽しんでいた。

するとそこへ、飛鳥からメールが鳴ったので、開いてみると…。


「え?え?えーーっ??!!」と、芝生広場で大声を上げたので、

一緒に居たクラスメイトたちから驚かれた。


「ど、どうしたのよ、青島さん?」

「や、な、何でもないですわ、コチラのお話しです。」

「えぇ~?なんなぁ~ん、それ。ウチらにも教えてぇな。」

「まさか彼氏とか?」

「や、私、彼氏なんて居ませんから。」と、とっさに嘘を付いた。

まっさか自分の彼氏が、有名な芸能人の、藤坂裕輔だなんてバレたら、

それこそ大騒ぎになると思ったからである。


その頃、響香の学校でも、お昼休みだったので、響香も、飛鳥からの仰天メールに驚いていたところであった。

そして、その日の夕方4時。

2人はジャンカラを出て、JR天王寺駅方面に向かっていた。そして、駅のコンコースを歩いていると、後ろから、「飛鳥ちゃーん!!」と言う声がしたので、

振り返るとそこにはエリカが、はぁはぁ、と、息を切らせて走って来ていた。


「あ、エリカさん。早いですね。」

「早いですね、じゃないわよ、もーう。あんなメール、突然。ってか、鷹梨君?」

「は、はい。」

「今日は調子悪くて休んだんじゃなかったの?」

「や、そ、それは…。」

「さては2人で学校サボってデートしてたんでしょ?」

「えぇ~?!」

「もうっ!エリカさん!そんなこと、さぐらなくていいです!ってば!」

「で、本当に東京行く気なの?」

「はい。さっき、浩兄にも電話しましたから。」

「で、それに、私と響香さん、そして、鷹梨君も一緒に?」

「えぇ。」


と言う、飛鳥とエリカの突然舞い込んだ話に千春は、


「は?ぼ、僕も?」


と、驚きを隠せなかった。


「そうですよー。」

「な、何で僕を?」

「そりゃー、先輩のこと、お父様や浩兄にも紹介したいから、ですよー。」

そ、そんなの無理無理無理無理っ!!」

「どうしてですか?私のファーストキス、奪っておきながら。」

「だーいじょうぶっ!東京滞在中のホテルや諸費用は、全部私のカードでまかないますから。」

「で、でも…。」


と、3人で話していると、そこに、「おーい!!」と、響香がやって来た。


「飛鳥っ!!なんやねん、お昼のメールはっ??!!」

「え?その通りやけどな?」

「やけどな?ちゃうわっ!!て、まぁ、えぇけどな、ウチかて久々にまこに会いたいしな。」

「そやろ?」

「あ、先輩やないですか。」

「や、やぁ、藍原さん。」

「もしかして、先輩も行くんですか?東京。」

「そうなってるみたい。」

「そうなってる?」

「うん。」

「さっき、飛鳥ちゃんから突然言われて一瞬フリーズしてたトコ。」

「そら誰でもフリーズする、って、あんなメール見たら。」

「まぁしゃーない。飛鳥にうたる。」

「しょうがないですわね。」

「じゃ、じゃあ僕も、お言葉に甘えて。」

「で、どうするん?新幹線か?飛行機か?どっちで行くんや?」

「それを悩んでてん。」

「そんなん悩んでたんかいっ!!」と言う、響香の強烈後ろ首突っ込みチョップに、飛鳥は、

「おおぅ、何すんねんっ!!」

「あははは、驚かせた仕返しや。」


と言うと、エリカも千春も笑いが止まらなかった。


「で、ホンマどうすんねん。荷物とか全然無いで?」

「そんなん、東京で買えばえぇやん?響香ちゃんかて持ってるやろ?カード。」

「こ、この世間知らずなお嬢様は~~~…。はぁ、持ってるけど?」

「だからな、カードで生活したらえぇ、て言うてんねん。」

「鷹梨君は?クレジットカード、持ってるの?」

「ぼ、僕?僕は、君らみたいなお金持ちじゃないから、そんなの持ってないよっ!!」

「先輩っ!大丈夫!先輩のことは私が全部まかないますから。」

「あ、ありがとう。」

「んで?どうすんねん。移動手段は。」

「そやなー。新幹線で行こか。天王寺からやったら、新大阪まで近いし。」

「そやな。ほな、切符買おか。」

「うん。」

「あ、この話し、東京には伝わっとるんか?」

「え?あ、う、うん、一応お父様には連絡済や。」

「そうか。ならえぇ。」

「でな、東京駅着いたら浩兄が八重洲口まで迎えに来てくれる、って。」

「浩兄か。長いこと会うてへんから楽しみや。」

「私も。」


そして4人は、地下鉄御堂筋線に乗り、新大阪駅へと向かい、翠の窓口で、東京駅までの片道のグリーン車の乗車券と特急券、グリーン券をカードで購入し、ホームへ上がる。

電車が来る前に、4人は売店で、それぞれ好きなドリンクやお菓子などを買った。


待つこと約5分。N700系の、のぞみ東京行きが、ホームに入線して来たので、4人は、

10号車の9番と10番のCとD席四つの席を向かい合わせに転換させ、座った。


「ぼ、僕、グリーン車なんて初めてだよ。」

「そうですか?私らはいっつもですけど。なぁ、響香ちゃん?」

「あんたなぁ。ウチやエリカさん、あんたの家とかと違てな、先輩の家はいたって普通の家やねんで?一般の人が、しかも高校生が、そんなしょっちゅうしょっちゅうグリーン車なんか乗るかっ!」

「そ、そんなもんなんや。」


と、そこに、車内アナウンス。


「まもなく、のぞみ2XX号、東京行き、発車致します。」とのアナウンス。

「さぁ、みんな?!まこちゃんたちが待ってる東京へ、いざ!行かんっ!!やで?!」

「何気合入れとんねん。この世間知らず&常識知らずのお嬢様は…。」

「えぇやんか。久々の旅行やもん。先輩も思いっきり楽しんで下さいねっ!!」

「う、うん、ありがとう。」


そう言って、4人を乗せた新幹線は、一路、東京へ向かった。

はてさて、4人の東京珍道中。

一体どうなりますことやら。そして、真琴は?藤坂は?次回、お楽しみにっ!!

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