1016 外国人狩り
しばらくしたあと、湧にいはまた戻った。
「済まない、千月さん、怒らせたら俺から謝罪を…」
「いえいえ、ちょっとビックリしただけですよ…それで、頼み事は?」
「ああ、あの子達は見ての通り、一卵性双生児だ、白子症も大した問題ではない、問題は外国人であることだ。」
一卵性双生児は異なる性別で生まれたのも結構珍しいが、その上アルビノか、超レアケースだな。
「湧にいの孫って、まさか養子の子供ですか?」
「そうだ、俺は結婚していない、あの子達の両親はイギリス人の若い恋人同士だ、台湾旅行中で隔離が起こし、戻れなくなった、その後色々あって、俺んちで住むことになった、そしていつの間にか、俺の事を父親と呼び、俺もあいつらのことを実の子供として愛していた…その日までは…」
湧にいは⋯いきなり、苦痛と、後悔を満ちた顔をしていた。
「1ヶ月前のことだ、外国人狩りは本格的に動き出したあと、あの子達の両親はすぐ隣りの村からパトロールしてきた自警団に捕まれて、そして…弁解の時間も与えられずに、いきなり…殺された。」
「っ!?」
な…!ありえない…なんということだ、そんな根も葉もない流言だけで、人を殺せるのか…!
「だがあの子達は運がよかった、あの時はたまたま俺はあの子達と付き合い、森で散歩している、この事はすぐ俺の側近が、まだ森にいる俺の所へ報告してきた、それからだ、あの子達は村も戻れなくなり、日の下で生きることもできなくなった。」
「まさか…森の中で隠した?」
「ああ、信用できる人しかわからないことだ、出かけた時も必ず頭全部を隠してる、だが澎湖は小さい、森っていったが、そこまでの深さはない、発見されるのも時間の問題だろう。」
「…つまり、私に頼みたいのは、あの子達を連れて、ここから逃げ出すこと?」
「察しがいいな、その通りだ。」
……気持ちは、わかる。
感情を持つ人間として、こんな目に合う子供は、気持ち的には、助けてあげたい。
しかしうちらにも事情がある、場合によっては危険を負わせる可能性もある、流石に子供二人を連れ回すことは…
「…あの子達の気持ちは?」
「ああ、この1ヶ月間、毎日もあの子達の脱走のために悩んでる、もちろんあの子達も了承済みだ、しかしなかなか実行に移らないのは、あの子達の信用を得られる人はいないのだ。」
普通そうだろうな、だって自分の両親を殺すのは、仲間だと思っている、ここの台湾人だ。
「賢い子達だ、脱走の理由は、あの子達もよくわかっている、あと残るのは…」
「あの子達の信用を得る、ということですね。」
「ああ、君は外国人だ、しかもここの人間ではない、あの子達の信用を得るのは、もう君しかいないのだ、だから君の超能力を見たあと、いつもこの事のために焦っている俺にとって、それは大きな希望なんだ。」
なるほど、あの子達の信用を得られるのはもう千月しかいない、その上、あの子達を守れることができる戦闘力もある、確かに湧にいにとっては希望だな。
「ねえ、湧にい、もしかして私をあんな部屋に閉じ込めた理由は…」
「ああ、君は外国人だからだ、見た目だけでは俺達と変わらないが、それでも危険性がある、その事は…済まなかった。」
「いえ、寧ろ感謝したいくらいです、ありがとう御座います。」
「いや…君の超能力を見たあと、余計なことをしてるなっと、いつも思ってる。」
「湧にい、その話、引き受けましょう。」
『…千月、気持ちはわかるが、うちらにも事情が…』
「しかし、もちろんあの子達次第です、もし私でも信用を貰えないのなら、無理矢理連れ出すことはできません。」
「ああ…それでいい、ありがとう、ありがとう…。」
湧にいは立ち上がった、涙滲んて、千月に、深いお辞儀をした。
「そうだ、言い忘れた、あの子達は君の力にもなれる、ちょっと待ってくれ。」
そういったあと、湧にいは隣りの病室へ行った、あの子達はそこで待機しているようだ。
『なあ千月、おまえ、どういうつもりだ?』
「どうって?」
『気持ちは非常にわかる、しかしあの子達、うちらと一緒に来たら、どう考えても足手まといになるぞ?』
「いーちゃん、やめてよそんな言い方…」
『ああ、悪い、しかし、危険性があるのは事実だろう?まさかおまえ、そんな自殺能力で、子供二人も守れる自信があるのか?』
「…ただ助けてやりたい気持ちはほとんどですが、もちろん利益もあります。」
『…あん?どこが…』
「いーちゃん、私達、どうやって澎湖から出られますの?」
……え?いきなりなにを…
「ここは台湾にとっては辺境です、しかも離島です、情報は少ないのです、だから早く本島へ行く方がいいでしょう、しかし私達はどうやって行くの?まさかここから泳いていくの?」
そうか!そういうことか!
「この話に乗れば、台湾本島への道は、湧にいが用意してくれるでしょう、うまく行けば、もしかして本島での住む場所まで用意してくれるかも、タダでね、あの子達のことは、本島でどこか安全の村を見つけたら、そこで安置してやればいいのです。」
やはり感情だけで物事を考えている人間じゃないな、千月は。
ちょうどその時、湧にいがあの子達を連れ戻った。
「さあ、千月お姉さんに謝れ。」
「はい、千月お姉様、さっきさーちゃんは失礼なことをしました、すみませんでした。」
「……ねえちゃんごめんな。」
「はい、私は大丈夫よ、気にしないでね、えっと、さーちゃんとゆうちゃんね、お爺さんの話、聞いた?」
「……はい。」
「千月さん、この子達を連れていけば、君の助力にもなれるはずだ、さあ、お前達の能力を、千月お姉さんに見せてくれ。」
「はい!」
「わかったぜ!」
そしてうちらは、とんでもないものを見てしまった。
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