第6話006★とりあえずは、ゲームの記憶を頼りに安全地帯へ

 ゲームの中の記憶を頼りに、周辺を警戒しながらゆっくりと進む。

 パーティーの途中での突然の断罪だったものですから………。

 今の私は、非情に残念なことに、豪奢ごうしゃなふわふわのドレスしか身に着けていないんですよねぇ……はぁ~…困りましたわ。


 そう、未来の皇太子妃にふさわしい?光沢のある薄紫の極上の生地をコレでもかってぐらいふんだんに使って作られたドレスだけ。

 防具としての機能なんて一切無い、心許こころもとないことこの上ないぐらい無防備な美しいだけの衣装………。


 スカート部分なんて、何枚も布を重ねてある上に、裾は床に引き摺るぐらいの長さで歩きにくいことこの上ない状態。

 ………そう、何かの呪いってぐらいには動きにくいわ。

 勿論、護身用の武器の類なんて、ひとつも持っていない。


 そう、未来の皇太子妃という立場上、一応の護衛手段は多少習っていても、常に護衛騎士が控えているから………。

 当然武器の類なんて身に着けてないのよねぇ……はぁ~………。


 まぁその代わりに、このふわっふわのドレスの中、特にボリュームたっぷりのスカートの中には、別のモノがたっぷりと仕込んであるのよねぇ………。

 うふふふふ……今までのシルビアーナって、どんだけって自分で突っ込んでしまうわ。


 そんならちも無いことを考えつつ、私は空腹感と喉の渇きをしだいに覚える。

 が、今は非常に危険な状態の中にいることを自覚しているので、ゲームの中の記憶を頼りにひたすら歩き続ける。

 とにかく、今は安全地帯へとレッツゴーよ…頑張るのよ、私。


 ああ、もう…ドレスが重くて…歩きにくいし…はぁぁ~…困ったわ。

 今履いている履物は、ダンス用のヒールなので歩きにくいことこの上ない。

 そう、パーティー会場に敷き詰められたジュータン用に仕立て上げられているダンス用のヒールだけあって、とても歩きにくいのよ。


 こういう、硬質な石造り?を長時間歩くようには作られていない履物なのよねぇ………。

 まして、今の私はドラム缶のように太っているし………。

 未来の皇太子妃教育など色々とストレスが溜まる生活だったので、自重なく食べ物を常に口にしていたから………俗に言う過食症というモノね………。


 そんな生産性も何も無い思考をグルグルさせながらも、私は必死で重い足を動かす。

 はぁ~……何とか目的の場所目前まで到着したようね。

 そこに存在する精緻な細工が施された強大で豪奢な門を見上げ、私は盛大な溜め息を吐いてしまう。


 「うふふふふ…終わったわ…

  私の人生………


  コレって、間違いなく

  創造主の最初の神子が

  封印されている間だわ


  この精緻で豪奢な

  門扉の向こうには


  狂った異形の姿の神子が

  縛鎖で封印石に


  縫い止められいるはずだもの…

  ……はぁ~………」


 下手に封印の間の門扉に触れると、勝手に開封されてしまうおそれがあるから、気をつけないと………。

 たしか、この封印の間の門扉の左右に、控えの間があるのよね。


 左右どちらか片方しか開かないから、ここで私は随分と迷ったのよねぇ………。

 ネットでは、どちらも部屋の中身の内容は変わらなかったから、封印の間を正面にして、右側の部屋に入ってたのよねぇ………。


 そんなことを考えつつも、どうせここでこの命も終わりという思いもあって、入ったことの無い左側の部屋の扉を開けて入る私は、きっと馬鹿なのだろう。

 広さにして、20畳ぐらいある室内を見回す。

 相変わらず、通ってきた廊下同様に、壁や天井がうっすらぼんやりと内側から仄かに光っているだけである。


 「えぇ~とぉ~…確かに

  何時もゲームで入っていた


  右側の部屋の中と変わらないわね

  物の配置も左右対称になっている

  感じね」


 思わず独りである寂しさから、声に出して呟いてしまう。

 通常は、ネット仲間と集って、チームで挑んでいただけに………。

 何度、あの正面の封印の間の奥に封じられた狂いし神子に挑んで果てたか………。


 「はぁ~…独りってこたえるわぁ

  ……まして、武器すら無いし………」


 ゲームの中では、魔術師や魔法使いが光の魔法で部屋をもっと明るくしてくれていたのよねぇ………と、そんなこと考えても仕方が無いわね。

 とにかく、もう足が疲れちゃったし………。

 そう思い、改めて薄暗い室内を見回し、大きなソファーを見付けて歩き出した。

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