第19話 散花

「・・・どこだここ?・・・俺の家か」


 源治が目を覚ましたのは自室のベットの上だった。どうやら怪異との戦いの最中自分は気を失てしまったらしい。自分の体に巻かれた包帯を見ると誰かが自分をここまで運んで手当を施したのだろう、そんなことを思っていると部屋のドアが開き亜紀が入ってくる。


「源治殿!お目覚めですか!」


「・・・これ、お前か?」


「はい!あれから3日も目を覚まさなかったので心配で心配で。あっ今なにか食べられるもの持ってきますね!」


 そう言ってパタパタと部屋を出ていく亜紀。残された源治はと言うと


「んー、なんか忘れてる気がする」


 寝ぼけ眼を擦りながらうまく働かない頭を回転させる源治。ふと視界に自分が任務で着るロングコートを見つければ


「任務・・・怪異・・・敵を斬る・・・あっ」


 源治が何かを思い出すのと同時に亜紀が握り飯がいくつか乗った皿と水筒を持って部屋に入ってくる。


「とりあえずおにぎりとお茶です!日本人ならまずはお茶とお米。万葉集にも書いてあります!」


 皿をベッドの傍らの机に置く亜紀だったが源治のあまりの無反応差に首を傾げる。


 「源治殿・・・?」


「亜紀・・・お前俺になんか隠してることあるだろ?」


 その言葉に一瞬亜紀の手が止まるが動揺を表に出さないようになるべく冷静に言葉を発する。


「・・・なんのことでしょう?もしや私が食べてしまったプリンのことですかな?それなら後で同じものを買ってきま「零零壱號」」


 不意に源治から放たれた単語に今度こそ亜紀の顔に動揺の色が浮かぶ。


「・・・聞いて・・・いたんですか?」


「そこだけだけどな、後はお前が影みたいなやつをぶった切るところも朧気ながら覚えてる」


 源治は皿から握り飯を一つ鷲掴みにするとそれを一口で口に入れると咀嚼し飲み込む、そして水筒を使いお茶を飲む。その姿はまるで亜紀が次に発する言葉を待っているようだった。


 「言いたくないならそう言ってくれりゃ別にいいんだよ。けどなこの数ヶ月一緒に過ごして俺はなんだかんだお前のことが気に入ってるんだ。だからよ、お前がなんか困ってるってんなら手ぇ貸すぞ」


「・・・ではこうします。源治殿が抱えている最大の秘密を教えてくれたら私も秘密を教えます。」


「そんぐらいヤバイ秘密ってことか?」


「はい」


 真剣な顔で答える亜紀に源治は一度天井を仰ぎ大きく息を吐くと


「実は亜紀で■■■してる・・・違うな。酒に酔ってハチ公像を持って帰ったことがある・・・これも違う。となると・・・・・」


 ブツブツと秘密を呟けば否定しそして源治が最終的にいきついた秘密とは


「俺は人間じゃねえ。人間だった俺の身体に色んな怪異の細胞をぶち込まれた半分人間で半分怪異の人造怪異それが俺だ」


「やはり、人間ではなかったんですね」


「その様子だと大体当たりはついてたみたいだな」


「はい、報告書には「事故で両親を失いその際に何者かの手によって怪異の細胞を移植される改造を受けた」そのように記載されていました」


「ほーう、それがお前の秘密ってやつか」


「このまま源治殿が自分の秘密を話したくなければこのまま話を終えようと思っていたのですが・・・その様子だとあまり気にしていないみたいですね」


「まぁな、話しちまうと面倒くせえ輩が増えそうだから言わねえだけだ。俺自身は大して気にしちゃいねえさ」


 あっけらかんと自分の秘密を話す源治に亜紀は呆気にとられたような顔をするが今度は自分が秘密を話す番だと床に正座をし姿勢を正した上で源治を見据えると


「私の正式名称は「零零壱號」古来より朝廷に仕えこの国を乱す存在を秘密裏に排除する集団「御庭番衆」に育てられた殺人機械、それが私です。目的は源治殿の監視。そしてもし源治殿が怪異でありこの国に仇なす存在になるのであれば暗殺すること。それが私の任務です」


 それを聞いた源治は静かに二個目の握り飯をまた一口で食らうと茶を飲んで一息つき


「・・・御庭番ってマジかよ。ほんとにいたんだな忍者って。」


「いやまぁ正確には私は忍者ではないのですが・・・って気にするところがそこですか!?」


 源治の予想外の返答に前のめりに倒れそうになる亜紀。


「私が源治殿を殺すように命令を受けていたこととかもっと驚くところがあるのでは?」


「けどお前は俺を殺そうとしなかったんだろ?だったらこの話はそれで終いじゃねえか。まぁこれが実はサイボーグだったとかの方がもっとビビってたと思うけどな。それとも俺のこと殺したいのか?」


「そんなわけないじゃないですか!」


 源治の問に半ば即答するような形で答える亜紀。興奮のあまりにその目には涙が溜まっている。


「源治殿は今まで殺人機械として育てられていた私を知らないとはいえ人として扱ってくれてなおかつ気に入っているとまで言ってくれました。それでなくても源治殿は私にとって・・・とにかく!私には源治殿を暗殺する意思はありません!ですが、源治殿が望むのであれば」


 そう言うと亜紀は改めて正座し直し服のボタンを外して開くとどこからか短剣を取り出し鞘から抜いて刃先を自分の胸に向ける


「このナイフで私の心臓を刺し貫いてください。源治殿にはその資格があります」


 覚悟を決めた目で源治を見る亜紀だったが短剣を握る亜紀の手は震えていた。源治は少しの間亜紀の目を見ると


「よし、なら目ぇ瞑れ」


 源治の手が短剣に伸びる。源治が短剣の柄を握ると亜紀は覚悟を決めたようにギュッと目を瞑る。そして源治の手に力が込められる、が聞こえてきたのは短剣が肉を抉る音ではなく、亜紀の下着の紐が切れる音だった。その事に気づいた亜紀が目を開けると予想通り下着の紐が切られ丸出しになった自分の乳房が亜紀の視界に映る。


「なっなっ何やってるんですか源治殿!」


 慌てて両手で胸を隠す亜紀。源治は短剣をその辺に投げ捨てると亜紀の身体を抱えてベッドの上に乗せる。


「だから言ったろ?俺はお前を気に入ってるって。気に入ってるやつをわざわざ殺すかよ面倒くせえ。それよりも正面から服を脱ぐなんてお前も大胆だな」


「あっあれは源治殿がナイフを刺しやすいようにと・・・そもそもなんで下着を着る必要があったんですか!」


「決まってるだろ。お前の下着見たらムラッと来たからだよ。据え膳食わぬは男の恥ってな」


 そう言って源治は亜紀をベットに寝かせると自分は膝立ちで亜紀を押し倒す形になる。その間亜紀は周知から顔を真赤にしまるで借りてきた猫のように大人しくなっていた。


「忍者なら房中術ってのできるんだろ?期待してるぜ。それとも俺とするのは嫌か?」


「だから私は忍者では無いと・・・・・・・・・・・嫌じゃないです。」


 最後はまるで蚊の鳴くように小さな声だったがそれが更に源治の劣情を誘った。


「まぁ嫌って言ってもやるんだけどな」


 源治は力の抜けた亜紀の腕を掴むと左右に開かせる。隠された亜紀の乳房が顕になれば亜紀は潤んだ瞳で源治を見つめ


「あの・・・源治殿」


「ん?何だ?」


「こういったことは初めてですので・・・何分優しくしていただけると」


「・・・そりゃ無理な相談だ」


 そして源治が亜紀に覆いかぶさる。その晩源治の部屋からは一晩中女の嬌声が屋敷中に響いていたという。

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