第37話 追憶の自爆遺跡 エクスプローション



 古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。

 しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。

 これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの過去の物語であった。





――自爆遺跡 エクスプローション


 遺跡内を移動していく子供達は、遺跡の樽型警備ロボットにでくわした。


 ロボットの内部で、何かがガチャリと音を立て、樽型フォルムの上部が、パカッと開き、何か細長い筒の様なものが出てこようとした時。


「あ、ロボットさ……」


 ポロンちゃんが挨拶する前に、ケイクが短剣を叩き込んで沈黙させた。


「そりゃー」


 ドギャッ


「わわっ、乱暴はいけないんだよっ。ロボットさんが痛い痛いしてるよっ」

「……何やってんのアンタ、過激な突っ込みの練習でもしてんの?」


 慌てて壊れたロボットの心配をするポロンに、そのポロンの首根っこをつかみながら訝しむミリ。そして、レジーナによるミリケイクへの援護射撃。


「ポロンちゃん、配線がバチバチいってて危ないから近づかないほうがいいよ。あとえっと、そのロボットさんは、そういう突っ込みが好きなんだよ。……たぶん」

「ふー、遺跡の職員が証拠隠滅しようと、モード切り替えたのかなー。あ、ロボットさんのことー? そーそー、ボク親切な突っ込み屋さんだからー。さー、どんどん行こー」


 そんな(自称)親切な突っ込み屋は、道行くたびに角から警備ロボットが出てくるたびに突っ込みを入れていく。


「いや、それ壊して……」

「か、変わった突っ込みだね。わ、わぁーすごいなー……」

「……」


 途中でミリが何か言いたそうにしていたが、レジーナが誤魔化した。





 残り一分を切ったところで、子供達は遺跡の出口近くにたどり着いた。

壁のないエレベーターが、上空へとまっすぐにのびていた。


「上に動く足場みたいなものかなー。エレベーターでいいかもー。手すりはちゃんとついてるけどー、身をのりだしたら落ちちゃいそー」


 そう言いながら、操作パネルに向かうケイク。


「あ、私がやるよ。やり方は手紙で教えてもらったし。少しぐらい役に立たないと。でも、不思議だね。本当なら、あなたの力を借りずに脱走するはずだったのに」


 しかし、レジーナが代わりに操作パネルに向かうことになった。


「この状況で役に立ってたら、そっちの方がびっくりだよー。何かねー、別動隊の力が不安だからー、ボクの依頼主さんが急にアシストして来いってー言ったんだよねー」

「そっか、大変だね」


 レジーナとケイクが訳知り顔で会話しているうちに、操作は進んで上昇シャフトの横についているランプが点滅した。起動したようで駆動音が響く。


「出来た! さあ、皆早く乗って!!」

「乗る!」「飛び乗る!」「走り込むー」「エレレーター」「言葉違うよー」


 レジーナの声にせかされるように、子供達は上昇シャフトに乗り込んでいく。


「まったく、あんたら二人でなに宇宙語を話(はな)してんだか、後でちゃんと説明してもらうから覚えときなよ」

「あははー、ごめんねー」

「あれ、レジーナちゃん……?」


 ぶつくさ言いながらも最後にミリとケイク、ポロンが乗り込む。

 しかし、レジーナは操作パネルから動いていなかった。


「何やってんのレジーナ、そんなところにいないで、早く……」

「ごめんね、私はいけないよ」


 ミリの声にレジーナは悲しそうな顔で答え、操作パネルにあるレバーを引いた。


「何言って……うわっ、ちょっと! レジーナ!!」


 エレベーターはレジーナを乗せないまま動き出してしまう。

 その時、カウントがゼロになったのかと奥の方から順に爆発音が連鎖する。


「これ、人の手で押したままじゃないと、動かないようになってたみたい」

「っ、あんた一人残して行けるかっ……。って、何すんの。離せバカ!」


 エレベーターから飛び降りようとするミリをケイクとポロンが止める。


「あ、危ないよミリちゃん!」「距離が開いてるしーこの高さじゃ無理だよー」


 レジーナの姿は次第に遠くなっていく。


「もし今度会えたらっ、……たくさん一緒に冒険しようねっ!!」


 その言葉を最後に、レジーナの声は聞こえなくなった。





 間一髪脱出した子供達は、爆発して壊れていく遺跡を遠くから眺めていた。


「レジーナ……」「レジーナちゃん……」「……」

「にゃー」


 思い思いにふける子供達の足元に、外との文通のやり取りを手伝っていた小さな生物が現れた。


「あ、小さいのだ」「手紙のだ」「どーぶつ」「にゃーにゃーだ」


 子供達が騒ぎ出し、沈んだ空気が少しだけ明るくなっった。


「……こいつって確か、手紙運んできたやつだっけ?」

「そーそー。よかったー、姿が見えなかったけど、無事だったんだねー」

「こいつ、何て動物なの? 種族的な方の名前」


 その生物を抱きあげるケイクにミリは尋ねる。


「そういえばー、個人名はつけてなかったねー。二ャモメだよー。人なつっこいからー、郵便物の配達とかをよく手伝ってくれるんだー」

「二ャモメさんていうの? はじめまして、ポロンはねポロンって言うんだよ」


 いつものポロンちゃんになったポロンちゃんは、さっそくフレンドリー精神を発揮して二ャモメと挨拶を交わしている。


「あんた、えーと……、ケイクだたっけ。レジーナが抜けた穴、責任もって組織に入って埋めてよ。えー、とか言わない。はい決定。もう決定。苦情は受け付けないから」

「えー」


 ミリは理不尽精神を発揮して、強引にメンバーの一人を勧誘することにした。


「じゃあ、決まったね。あたしたちの組織の名前も、もう決まったことだし。さっそく活動開始するよ! まずは、移動の足が必要か……」


 そして、さっさと話を進めていく。


「ふぇ、ポロンが知らない間に、何かが決まっちゃったよ? 何だろ」

「まだ、やるって言ってないけどー、名前って、いつ決まったんだろうねー」

「そんなのこれしかないじゃん」


 と、ミリは二人の疑問にケイクの腕の中の生物を指さすことで答えた。


「にゃー」

「トレジャーハンター ニャモメ団! ウチ達が出会ったきっかけであり、生き残ることになった転機なんだから!」


 それが、トレジャーハンター二ャモメ団がこの世に誕生した瞬間だった。


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