第30話 後悔の伝言遺跡 リグレット



 古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。

 しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。

 これはそんな者達、二人(と一人格)のトレジャーハンターの物語であった。




――伝言遺跡 リグレット


 トレジャーハンターである赤風団のルナとガルド……そしてルピエは、小さな伝言遺跡リグレットにやって来た


「ふぅ、ここまで道案内ご苦労様。助かったわ、はいこれお礼」

『ドウイタシマシテ。ジーピーエスキノウガ、オヤク二タッタヨウデ、ナニヨリデス』


 道案内役を務めた樽型の機械に、ルナはお礼を言う。ガルドはその仕組みについて機械に質問する。

 

「確か、衛星とかいう空の向こうに浮いてる巨大な機械と通信して、位置情報を取得しているんだったかな?」

『ソノトオリデ、ゴザイマス』

「家を建てなおす為にバイトしてるって話だったけど大変ね」


 屋敷遺跡ホームから出ざるをえなかったという、機械達の話を聞いたのはついさっきだ。


「暗黒団のあの人も学習したみたいだね。二ャモメ団が去るのを見計らってから遺跡を襲撃してスフィアを奪うなんて」

「あいつら、そうとう悔しがってたわね」

「おや、かたき討ちでもしてあげるつもりかい?」

「違うわよ! あの遺跡にあったスフィアって、修理系のスフィアだったそうじゃない。なら、あいつらがぶち割ったスフィアも修復できるかと思ったのに」


 とルナが言えば気付いたように、ルナの中の別人格ルピエが反応する。


『あ、確かに……。それがあれば……』

「ああ、それはおしかったね」

「でもそうね、この子には案内で世話になったし、あの男にあったらまずは火炎でざっとひと焼きしてあげないとね」


 お世話になった樽型の機械に手を振って分かれる。


「キミのひと焼きでも、相手を消しずみにしてしまうと思うんだけれどね」





「ところで珍しくあんたのリクエストに応えて、この遺跡に来てみたけど、何か興味を引くようなのがあるの」


「まあ、興味というかね……」


 バタン。


「あ、閉じ込められたみたいだね」


 ドアが閉まった。ガルドは特に慌てた様子はない。


「みたいだね、じゃないわよ。なに悠長なこと言ってんのよ。出しなさいよ、こらー!!」


 ドンドン、バンバン。


「何だか、つい最近も同じ様な事があったばかりだよね」

『あ、見てください中央の台座にホログラムが……』


 ルピエが言う通り遺跡内の中央にある台座が淡い光を放っていた。そこに女の人の立体映像が映り、喋りだす。


「この遺跡に来た、という事は……あなたは、あの事件の真相を探りに来たということでいいのね。もし、関係ないし、巻き込まれたくないというのなら、今


 すぐこの遺跡から去る事をお勧めするわ」

 といいつつも扉は開かない。


「オススメしてるなら、扉開けなさいよっ」

『ええと、ホログラムですから、話しかけても』

「そんなこと分かってるわよ!!」

『ご、ごめんなさいっ』


 そんな騒ぎに関係なく、話は進んでいく。


「これから私の得た全ての情報を話します。どうか、この情報が、あの事件の真相を解き明かすカギとなる事を……」


 そして、ホログラムの女性は話し出す。


「まったく。なんなのよ、この女……ねえ、ガルド。……ガルド?」

「……」


 ガルドは真剣な表情で話を聞いている。


「(考えてみればこいつの過去って何にも知らないのよね。ソロでトレジャーハンターの活動してた時に助けられて以来、何となくいっしょにいるけど……)」


 つらつらとそういう感じのことを考えていたルナは、いつの間にだかホログラムの女性が話し終っていることに気が付いた。


「と、いう事情なんだけど、ルナ。僕はこれからやらなきゃいけなことがあるんだけど、君は……」


 真剣な表情のガルドにルナは正直に言った。


「あ、ごめん聞いてなかったわ」

「さすがに、それは予想外だよ」


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