第26話 停滞の地下遺跡 アンダーワールド



 古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。

 しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。

 これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語であった。





――地下遺跡 アンダーワールド


 さっそくだが地下遺跡アンダーワールドにて、ニャモメ団の三人は偽ニャモメ団と遭遇していた。


「マネマネマァァァネェェェ!!」「マネェェェッ!!」「ムァネィエィエィ!!」

「怖っ、こいつら怖っ、顔とか姿は同じなのに、声がマァァァネェェェ……としか言わないところが怖っ!」

「あははー、すごいねー。倒しても倒しても数が多いしキリがないねー。人のマネができるスフィアかあー、めずらしー」


 目の前の光景に戦慄してたり冷静に観察してたりのミリとケイクだが、戦いの手は止めない。


「説得しなきゃっ、ポロンはねっ、ポロンと戦いたくないよ、だから……あいたただよ。ふぇ、拳骨されちゃった」


 二人の背後で、同じ顔の自分に説得中のポロンちゃんは、同じ顔のポロンちゃんらしからぬ暴力に泣かされている。

 消耗した愛用武器の代わりに、エイリスから支給された武器で戦っているが、体力の方が持ちそうになかった。


「あぁもうっ! 埒が明かん」

「あそこにちらっとみえるけどー、一人だけ姿が違うのがいるよねー。あれボスかなー」


 遺跡の奥に一人離れて立っている、騎士の鎧を来た男性を見てケイクはそう判断する。


「何か、お手ての中の丸いのとお話してるっ。あれスフィアかなぁ?」

「なるほど、あいつがマネマネ軍団を操ってるわけね。あそこまでたどり着ければ……」


 残った余力を振り絞り、ミリケイク無双を発動させる。

 けちらしけちらし、そこのけそこのけ、かきわけかきわけ。・・・を繰り返し、その騎士の男性の元へ到着する。

 周囲のマネマネ軍団は、騎士を巻き込まないように攻撃を取りやめた。

 ミリは新品の武器を構え、悪い顔で悪いセリフを吐いた。


「さー、観念してもらおうかっ。その首もらったあっ!」

『……ああ、なぜうまくいかない……』


 騎士姿の男はスフィアから目を離さない。


「無視すんなっ!」

「どーどー、あ、何かするみたいだよ」

「戦闘かっ!?」


 新品のおもちゃをふりまわしたいオーラだだもれのミリだった。

スフィアが輝きを放つ。三人が蹴散らした敵の一体を包み込み、その姿を変える。三人の内の誰かの姿ではなく、ドレスを来た女性の姿へマネていく。


「あれ、この女あれじゃん。宇宙で会った屍」「親しき仲だったりするのかなー」「また会ったね。ポロンは嬉しいよっ」

『マアァァァァネェェェェ・・・・マアァァァマアァァァ……ネェェ』


 マネた女性は、何故かマァァァネェェェと歌いだした。


『違うっ! 私が聞きたかったのは、そんな声ではないっ!! ……だが、 どんな声だったんだ。思い出せない……思い出せない……』

『マアァァァァネェェェェ……マアァァァマアァァァ……ネェェ」


 狂ったようにマァァァネェェェと歌い続ける女性の姿、と激しく嘆く騎士の光景は異様な迫力を演出していた。


「ほらミリー、チャンスだよー。スフィア壊せば、解決だよー」

「あああああっ、そんなことしたら何か後味悪くなりそうな雰囲気!」


 戦意が一気に消滅した。


「そういえば、リトライ遺跡に入る前にエイリスがこんなの渡してくれたよねー」

「それって、わざわざ宇宙に行ってまで取ってこさせられた骸骨女の首飾りじゃん。これ渡せば正気に戻るんじゃね?」


 差し出してみた。


『ああああぁぁぁ、姫様! なぜ私を連れていってくださらなかったのですか! なぜ、戻ってきてくださらない!! 使命を果たし終えたら、歌を聞かせてくれると約束してくださったじゃないですか!』


 駄目だった。


「エイリスぅっ! 物、渡すんなら、ヒントも一緒に渡せ。説明が少ないんじゃあぁ!!」

「姫様ってことはー、この釘飾りの持ち主さんってー、エイリスの祖先なのかもしれないねー。それでー、助けてあげなくもないわって思ったのかなー」

「自分で助けれっ!」


 ミリは激怒した。


「あはは、けれっ、だってー。いひゃいよー。あ、ポロンちゃんが電波になってる」


 ミリに頬をつねられているケイクは首飾りと話し出したポロンを見て、端的に言った。


「呼びかけてるのに、声が届かないの? ……うん、うん。分かったよ。ポロン頑張るっ。一緒に届けようねっ」


 ここからどうやら、天然でもボケ娘でもポンコツでもない、スーパーポロンちゃんタイムの始まりのようだった。





 優しい声響く 彼方から呼んでる

 こっちへおいで もう歩かなくていいんだよ

 疲れたきみの足は もう先へは歩けないから


 すこし座って休みましょう

 そしてまた明日の話をしましょう

 苦しい今日を越えたら 新しい景色が待ってる

 大丈夫もう一人じゃない 私が一緒に歩くから




 

 スーパーなポロンちゃんの活躍で、届かなければならないものはちゃんと届いた。

 マネではない女性の姿が現れ、騎士の隣に寄り添う。美しい声でポロンちゃんの声と合わせ、歌いあげる。


『この歌声は、ああ、姫……。やっと戻ってきて……、明日も一緒にいられ……』


 騎士の男性が動かなくなって、正真正銘返事のないただの屍となったのを見届け。

 首飾りをその隣に置いておく


「こう色々見せられると、何か慣れてきたわ」

「ポロターガイストが起きても、僕らきっと驚かないよねー」

「ポルタ―・ガ・イーストさんっていう名前なの? この人。ポルタ―さん返事してくれなくなっちゃった」


 取りあえずの戦利品スフィアのほかに、霊力耐性の経験値を得たニャモメ団だった。


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