第20話 適当な情報遺跡 データベース



 古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。

 しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。

 これは、そんな者達トレジャーハンターを支える情報屋の物語であった。





――情報遺跡 データベース


「というわけで、このごろの注目の遺跡と言ったら、走破遺跡ですかね。なんでも大勢の人を集めた大々的なイベントがあるとかで……。えぇ、普通の一般的なイベントみたいですよ。まあ、トレジャーハンターのみなさんには関係ないですよね。」


「あ、イベントと言えば、知ってますか。こんど情報屋を集めて、遺跡のセキュリティハッカー大会があるんですよ。なんでも発見してから何百年と経つのに未だに侵入すらできない遺跡があってですね……その名も王宮遺跡です。」


「応急手当の応急じゃないですよ。ゴージャスで偉い感じの方の王宮です。その王宮遺跡、ほんとセキュリティが固くて固くて……。他の遺跡では部分的にしか作動していないで電子的な機会がほぼフルで生きているみたいで、指紋認証とか、声紋認証とか、静脈認証とかが。……そんなの王族死んでるしどうすりゃいいんだって、トレジャーハンターさん達みんな泣いて手こずってるんですよね」





「あ、そうでしたね。注目の遺跡……注目の遺跡……。あ、今の季節旬なのは走破遺跡と言って……え、それ聞いた別の聞かせろ? やだなあ、ボケてませんよー。冗談ですってば、今調べますから怒らないで下さいよミリさん」


「検索検索……そういえば、この間の遺跡どうでしたか? 人が変わったり暴れたりする遺跡は。……話が違う? あれ、おかしいですね。ああっ、拳はやめてくださいよ拳は、ビンタならいいのかって? いいわけないじゃないですかっ、やめてください暴力反対です。ううっ、そんなに怒らなくても……」


「えっ、怒りのあまりスフィアをぶち割った!? だめですよそんな事しちゃあ。スフィアって未完全なままでも効果が発動する事あるんですから。もし、そこに他のトレジャーハンターの人が来たら……。だ、大丈夫ですか? 何か変な汗かいてますけど」





「……まあ、お茶汲んできましたので。どうぞ。いえいえ、ポロンさんどういたしまして。あ、ケイクさんお菓子美味しそうですね くれるんですか私に? ありがとうございます、いただきます。あむあむ、あ、これおいしいですねー。ええ? あのスフィアについてですか? ……ふむふむ、……なるほど、確かに」


「ケイクさんの主張をまとめると、つまりあのスフィアは、対象者の無意識の潜在意識や別人格なんかを、分身させてしまうスフィアだということですね。仲間が突然狂ったようにみえたのは、顕在化した別人格の分身の方だったと……と、するとポロンさんの場合は、裏表のない性格が影響したんですねきっと。別人格や無意識の潜在的な性格が無かったせいで、精神を分身させられず体を分身させる方にエネルギーを使ったのではないかと……」


「あ、ポロンさんどうもご丁寧に、コップはこちらで洗っておきますから……。……そうですか、ありがとうございます。やっぱりいい子ですねポロンさんは。はい、いい子いい子。なでなでしてあげますよー」





「……そうですね、ちゃんと戻って、スフィアは回収した方が良いかと。近くに行って? いいえ、それだとかえって危険かも……念のためスフィアの影響を受けない範囲の外から吹っ飛ばすなり焼き尽くすなりした方がよいかと」


「大げさじゃないかって? さっきも言ったじゃないですか、スフィアは普段はすっごく便利な反面、壊れたりするとどんな事になるか分からないという、とんでもない兵器なんですよ。そこまでは言ってなかっただろうって? いいじゃないですか、大体あってれば」


「じゃあ、そういうことで。アゲハの情報屋、ご利用ありがとうございましたー。またのおこしをお待ちしておりまーす。……ふぅ、二ャモメ団の方たちの相手をするとやっぱりちょっと疲れますね。……あれ、どうしたんですか戻ってきて、何か忘れ物でも? 肝心の用事がすんでなかった? 何でしたっけ……?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る