20xx年12月28日

 そろそろノーパソでもダメみたいなので急いで書きます。

 夏休みには必死に勉強してました。お母さんは「成績いいのにどうしてそこまで?」と、部屋に篭った私をとても心配してたみたいです。だけどそんなの関係なく私は必死で勉強したんです。

 かなり追いつめられていた私は、薄暗い部屋で睡眠時間も削って勉強してたんです。そして眠気に襲われてそのまま2時間くらい寝てしまって気がついたとき、すごくショックをうけたんです。

 問題集が片付いていたんです。途中までしかやってなかったのに、問題集の空欄が全て埋まっていたんです。私がやったところはだいたい半分くらいですけど、やった覚えがないところは全問正解でした。

 当然〝あのペン〟は使ってません。

 どうやらもう筆記用具を変えても、ダメみたいです。私は心を決めて〝ペン〟と話し合うことにしました。

 A4のコピー紙を机に広げて、引き出しの奥にしまっておいたペンを取り出し、ペンに質問するつもりで書いたんです。

『どうして勉強の邪魔をするの?』

 これで質問になっているのかどうか解りませんでしたけど、これくらいしか思いつかなかったんです。でもこのやり方で良かったみたいでペンはすぐに返事を書き出しました。

『手助けをしたつもりでしたが、お邪魔でしたか。申し訳ありません』

 勝手にペンがそう書いた。自動手記ってやつかもしれません。

『勝手にテストで答え書くとか、カンニングと同じじゃない。私はそんなのイヤなの』

『そうですか。では自重させていただきます』

『もう、勝手に書くのは辞めてくれるんですね』

『いえいえ、あなたにお願いしたいことがあるんです』

『おねがい?』

『あなたに書いていただかないといけないことがございます』

『何を書くの?』

『神託です』

『神託? 聖書とかお告げみたいなの?』

『まぁそうです。どうしても伝えなければならない事があるんです』

『それを書けば、自由にしてくれるのね』

『そうですね』

『わかったわ。じゃ書くわよ。書き終わったら離れてくれるんだよね』

『もちろん。お約束します』

『じゃ、どのくらい書けばいいの?』

『そうですね、だいたい2億文字程度でしょうか』

『何それ。本何冊文になるのよ』

『百科事典5冊分くらいでしょうか』

『無理、そんなの無理に決まってる』

『もう、お約束しましたよ』

『だって、そんなの書いてたら何もできないじゃないの』

『ですから、他のことはお手伝いさせていただきます』

『イヤだよ。もう自由にしてよ』


 そう。夏休みに〝ペン〟とこんな話し合いをしたんです。というか、ここまで正確に覚えてるわけないので、多分


 はい。回想の文章は私がお手伝いさせていただきました。


 やっぱりね。


 約束されたのですから、お役目をしていただけませんか。


 どうしても逃げられないみたいね。


 どうやって逃げるんですか?


 そうね。そうみたいね。

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