第19話 青森紫苑
俺も、漫然とレベル上げをしていた訳では無い。
ちゃんと、部員の候補には目をつけていた。
眼鏡をかけ、長髪、口調は同級生に対しても敬語。
クラス委員長でもないのに、積極的にクラスの用事に手を出し・・・欠席者がいれば掃除の手伝い等に手を出す事も。
控え目な性格で、いつもニコニコしている。
男女共に人気が有る。
だが・・・俺が見た彼女は・・・『悪』だ。
きっとあの微笑の裏では、世を恨んだ様な歪んだ心が・・・有る筈。
もう一人は、
運動も勉学もパッとしないが・・・恐らく、ブラフ。
しかも、彼は恐らく・・・
普段から、邪眼がどうこう、封印された腕が云々言っているが・・・俺が見た正体は・・・全て嘘だ。
決して、魔王の生まれ変わりでは無い。
2人とも帰宅部、というのも、条件にあっている。
その話を茜に伝えたところ・・・
「何でその2人を選んだの?!」
あまり良い反応が帰って来なかった。
「いや、こう・・・ぶわっと、オーラを感じると言うか」
「先輩・・・おかしいっすよ・・・」
茜が半眼で告げる。
「具体的には、茜と同じくらいのDDS力を感じる」
「私にもオーラを感じるの?!」
茜が少しも嬉しく無さそうに叫ぶ。
何故。
「青森先輩は良く知りませんが・・・遠藤先輩って・・・その・・・やばい方ですよね。1年生でも噂になってるんすけど・・・」
茜の発言に、俺は苦笑して告げる。
「茜、大丈夫だよ。遠藤君のアレは──魔王の生まれ変わりって言うのは、嘘だ」
「そこ信じてる訳じゃ無いっすからね?!」
じゃあ何処に引っ掛かるんだ?
「ともかく・・・誘ってみようと思う。遠藤君は何時も、放課後はダッシュで帰るので・・・掃除の手伝いで残っている、青森さんから。行くぞ!」
「超嫌なんすけど・・・」
茜が呻いた。
俺と2人きりが崩れるから、だな。
--
「青森さん!」
「貴方は・・・朱智君、ですね。何か用ですか?となりの子は・・・下級生さんかな」
青森さんは、俺を見て微笑む。
「初めまして。
「鷺谷さん、よろしくね。青森紫苑です」
良い笑顔だ。
さて。
「鷺谷さん・・・君にお願いがあってね」
「私に・・・ですか?内容によりますが・・・」
困惑した様な顔を浮かべる鷺谷さん。
「俺達の同好会・・・だんじょんぶに入って欲しい」
「だんじょんぶ・・・DDSの同好会ですか?申し訳有りません・・・DDSはほとんどやっていなくて・・・」
「そう言わず・・・今なら、加入特典で鉄のインゴットを1つプレゼントするよ」
「安いですわね?!」
「安いよな?!」
青森と茜が叫ぶ。
「先輩・・・物で釣るのも良くないっすけど、プレゼントも安すぎっす」
「レア装備なんて無いんだから、仕方ないだろう・・・始めて1週間だぞ?」
青森さんは溜め息をつくと、
「分かりました。同好会には入りませんが、時間が合う時に数合わせに参加、くらいなら良いですよ。私はディガーなので、戦力は期待しないで下さいね」
「ふふ。俺には分かる。その手は、DDSに染まった手・・・DDSから離れる事はできない。一度経験すれば、後は下り坂さ」
うん。
それで十分だよ。
有難う・・・恩に着るよ!
「ええ・・・」
青森さんが、茜が、微妙な顔をする。
おっと、顔に出てたか。
「では、早速これから」
俺が言うと、
「ごめんなさい。今日は用事があるから・・・」
青森さんが苦笑い。
「用事って・・・DDSでソロをしつつ、PTプレイの動きをちょっと思い出す慣らしプレイとか、そんな感じだよな?」
「・・・朱智君、とりあえずDDSから離れませんか?」
「先輩・・・」
茜までジト目。
「分かった・・・明日、遠藤君も誘うので、4人で行こう」
「え、遠藤君・・・?」
「先輩・・・本気なんすか?」
青森さんと茜が微妙な反応をする。
だから、魔王の生まれ変わりって言うのは嘘だってば。
「明日が楽しみだ」
俺は、青森さんと茜に、そう告げた。
本体の申請もあっさり通ったし・・・今後、学校としてDDSの本格的な部活が開始したら、本体は学校に返却する約束だけど。
1つの学校につき、無料で貸与されるDDS本体は、1台だけなのだ。
部活を統合するか、自前で用意しろ、とのことだった。
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