第4話 ゆびわ

・・・いや、言い訳しよう。

別に、付き合うのを軽く見ているわけじゃ無い。

部活に入る交換条件とかなら、偽りの恋心とも釣り合うかな、って思っただけだ。


「・・・分かりました・・・だんじょんぶ?に入るので、彼女にして下さい」


ぎゅむう


また強く抱きついてくる。


「ああ、よろしくな」


思わずよぎる邪な思いは、振り払う。

クールになれ、俺。


「でも、何で部活なんて作るんっすかぁ?」


茜が、心底不思議そうに尋ねる。


「DDSの為に、俺は転校してきた・・・DDSは俺の人生の目的・・・だから・・・俺は部活を・・・作る・・・」


俺の答えを聞いた茜は、また変な顔をして、


「・・・良く分からないっすけど・・・先輩、学校の部活じゃなくても、個人宅でもDDSできる、ってのは分かってるっすよね?」


衝撃の一言を放った。


--


「先輩とお泊まりっす。家には私と先輩だけ・・・きゃあ・・・遂に大人の階段を上っちゃうっす」


前を先導する様に歩く茜。


「大人の階段は上らないからな。・・・DDS初体験・・・ある意味凄い階段は上る訳だが」


と言うか、親いないのか。

クールになれ。


「でも先輩、何で個人でDDS出来ないって思い込んでたんすか?」


茜が不思議そうに尋ねる。


「数世代先を行くハイテク機械だぞ。学校とかの公共機関にレンタルするならともかく、個人で買うなんて想像がつかなかったよ」


「そこまででもないっすよ。本体が10万前後・・・今は10万切ったりするみたいっすね」


茜が振り返らずに言う。

数百万すると思ってた。


「・・・そうか・・・大阪の人は、大抵、家庭に1台、DDSの本体を置いているのか」


「いえ、流石に大抵は無いですよ。うちにはあるってだけっす」


まあ、10万、安くは無いな。


「大阪の家って、大抵、家にたこ焼き器があるらしいじゃないか?あれと一緒で、必ず1台有るのかと思ったよ」


「先輩、大阪人だからって、必ず家にたこ焼き器置いてる訳じゃ無いっすからね?」


何・・・だと・・・


「データ保存用のデバイスが1万円。先輩は1万円のダイバーリングさえ買ってくれれば良いっす。うちの本体でプレイするっす」


1万なら何とかなる。

本体は・・・まあとりあえず、言葉に甘えよう。


「あ、エンゲージリングでも良いっすよ?」


「それはまた今度な」


そんな金は無い。

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