第2話 クスコの変

 アンチ勢の中には「このように膨張した男子のシンボルを常時見せつけ、ペニス人気を煽る行為は、実に家父長制保持の陰謀の兆しあり」とし、「極めて女性を軽んじている」とする教育評論家――中村クスコなどもいた。


 この教育評論家が主催する「膨張ペニスから都民を守る会」は、この意見を「女性の総意」であるようにバイアスをかけ、マスコミや貧困ライターなどを通じて、プロバガンダ展開を試みた。



 だがこの男のペニスは、縁起モノとしての価値があり、子宝祈願として各地の寺社からお祭りの招待を受けたり、同人作家による彼を主人公としたマンガやイラストの作成が相次いでいた。

 特に我が国の誇る子宝祈願の祭典「まらかな祭」において、彼はピンク色のチョコバナナとして颯爽とデビューし、三日間の開催で累計売り上げ数が500万を超すなどの高い経済効果を上げることに成功した。


 また放送中の彼は極めて高い紳士性と知性、また優れた仁徳を持っていたがために、その柔らかな物腰から「ボッキのお兄さん」などと、視聴者の母子から愛称付けられ、その人気は我が国のご長寿児童教育番組である「お義母さんといっしょ」に逼迫するものであった。


 このような彼の擁護派による逆襲を受け、中村クスコ一派は為す術もなく返り討ちに遭い、「膨張ペニスから都民を守る会」には常に非難の電話が寄せられる結果となった。

 

 こうしてクスコは手痛い退陣を強いられる結果(クスコの変)となったのである。


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