刹那に渡すバトンの重味

 今から20年ほど前、ドリーという羊がいた。世界で最初にクローンとして誕生した哺乳類である。厳密には雌羊だ。
 ドリーは存在が公表されて以来全世界で 議論の的になった。6年ほど生きて、病気にかかり安楽死となったが、現在では哺乳類のクローンはどこの国でも行わないとする倫理規定が一般的である。マンモスのような絶滅した種の復活はまた別だが。
 そんな現状からすれば、当たり前のようにクローンが選択肢として活用される本作の社会は現実に比べて進んでいるのかそれとも退化してしまったのか。
 本作でのクローンは意識的にああいう設定にしてあるようだが、健康な人間とすでに亡くなった人間の境目を本人以外の誰が埋めるのだろう。