第6話 お見舞い

「お見舞いに行きたいが」

とお客さんから連絡を頂く。

ほとんどが、男性なわけで、引きこもりはスッピンなので

見られたくはない。

本当は、ケガをした翌日に美容院を予約していた。

髪を切って、カラーもする予定だった。

出来なかったので、ボロボロなのだ。

それでも、どうしてもと言ったOさんは、

ゴルフ仲間でもある70歳代。

もう一人の70歳代のおじ様とSOS会というゴルフの会を作っている。

Oさんは、卓球もやられていて試合にも出ている。

その他、活動的な人。

「何か欲しい物はない?」

「イチゴですかね。」

と言うとイチゴと果物の詰め合わせを持って来られた。

家の場所を教えるのも抵抗があるが、

ゴルフ仲間は、今後のこともあるし、まあいいか。

ゴルフ出来るまでには、半年近くかかるらしいが…

何でも手助けするよと言って頂いた。


次の訪問者は、

SNSにかなり落ち込んでいる気持ちをアップしたので、

大丈夫かと心配して来て下さったKさん。

「お見舞いはいいですから。」

と言ったが、

「何か食べたい物とかないんか。」

「どん兵衛とシーフードヌードルが食べたいです。」

段ボール2箱分の食料を買って来て下さった。

どん兵衛にあんなに種類があるとは知らなかった。

にぎり寿司と焼き鳥もあった。

ケガしてから、食べたことない。

嬉しい。

ありがたい。

日本酒もあった。

いや、飲まないですが。

「何でもいいんさい。土日なら何でも運んでくるよ。」

「ありがとうございます。」

「かなり落ち込んでるようだったし、うちのが足折って、大変だったからね。

あんたは、一人暮らしだからキツイだろう。」

身に余るお見舞い金まで頂いた。

男気のあるKさん。


本当は、自宅を知られたくないし、

室内も荒れてる。

そんなこと言っていられないけど。

自由に動けないので、洗濯物やタオルは、手の届く範囲に置く。

食べる物も取りやすいところに。

掃除は、座ったまま、コードレスのスティッククリーナーで届く範囲のみ。

階段もウェットティッシュで拭く程度。

誰か来るということが、あまり…

ただ、心配して頂いてありがたい。

感謝!

誰とも会話を交わさない日も幾日もある。

1人取り残されているような、

このまま元の生活には戻れないのではないかという不安。

いつになったら、歩けるようになるのか。

自宅療養のため、誰も私の不安に答えてくれない。

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