第22話言い訳と希望

モモはなれない吉祥寺の夜道をフラフラしていたが

タバコの煙にまかれ絶望と孤独の朝を迎えた。


井の頭公園のベンチにモモは一人で座り茜色に照らされ

これからのことを考えていた。


まず、今日は家に戻ってバイトにゆき

絵本ギャラリーのトミーファイルのオーナーさんにゆりちゃんのことを話して

とにかく謝ろう。

そのあと、毎年展示をしているベリーギャラリーに打ち合わせにもゆこう。

そのために何枚か絵を準備をして持っていこう。


昼間は地元の喫茶ロジーのバイトでは

春川君と新人の可愛い女の子がイチャイチャしていて

モモにとっては劣悪な環境の中バイトを頑張った。


バイトが終わった。街は夕方だ。モモは駅にひた走り

オレンジ色の電車に飛び乗り吉祥寺へ向かった。






いつも新しい絵本が並ぶ大きな絵本の棚が南側に一つ。

店内の中央には平積みにされた絵本たち。

空いてる壁には今話題で人気の絵本作家の絵の展示をしている。

奥には絵本ギャラリートミーファイルの

中肉中背で鋭い目つきをしていて眼鏡をかけた中年男性のオーナーが

レジでドシっと座っていた。


「こんばんは。」

「こんばんは。」

「・・・すいません。・・・実はいとこが音楽活動を辞めてしまって・・・。」

「そうかい。わかったよ。大丈夫。店内でも見て行ってください。」

「・・・はい。」


「あなた。ちょっとまって。あなた、絵を片手に持っているね。暇つぶしに見せてくれない?」

「いいですよ。」

モモはベリーギャラリーでの展示の打ち合わせ用の絵をみせた。

オーナーは眼鏡をひからせ、まじまじとモモの絵を見た。



「うーん・・・なかなかいい絵を描くね。あなた。」

「ありがとうございます。」

「私の主宰するワークショップにこないかい?」

「え?」

「ワークショップに向けてのオーディションはパスだ。

 これだけ描けるんだもの。」

「え?どんなワークショップなんですか?」

「うちはギャラリーもやってるけど事務所があってね。絵本プロダクションなんだ よ。ワークショップの内容は絵本作家の養成。

 参加すれば君の描いた絵本が商業出版されるかもしれない。」

「そうなんですね。突然なので、少し考えます。」


モモは絵本ギャラリートミーファイルをあとにした。

トミーファイルにこんなチャンスが転がっているなんて・・・

でも失敗ばかりの私。どうしよう。


吉祥寺の雑踏をさまよい家路にモモであった。



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