第12話ワンショット(一撃)

 トンナム国の首都、チョンゴン・シティは今日も平和だ。

僕はセブン・ミサキ。お父様の会社の幹部に向かい入れて貰う為に親戚会社、オオバンクルワセ株式会社に入社してからだいぶ日が経ったなあ。

いつもの様にお昼のランチを食べにこの繁華街へ来た。

安い店を選ぶ庶民派と言うやつだ。お金を貯めて高級外車を買う為。

節約と言うものをしているんだ。

さっきからこの安レストランに居るのだが。

あのウエイトレスの女どこかで見た覚えがある。


カランカラン・・・


ウエイトレスの女「いらっしゃいませえ」

      「お二人様ですかぁ?禁煙席でよろしいですね?」

      「こちらでございますう」


セブン(こっちに来た!)


ウエイトレスの女「ご注文はお決まりですかぁ?」


水のお代わりを注ぐ女。おもむろに手首を掴む僕。


ウエイトレスの女「キャッ」


セブン「おいお前!」


ウエイトレスの女「な、何をなさるんですかお客様!」


セブン「お前、アン・ユウリィだな?」


ウエイトレスの女「ひ、人違いですう!」

   「ワタクシはナナ・ワンショットと申しますう・・・」


セブン「僕の目はごまかせないぞ、アン!」

   「学校を辞めたと思ったら」

   「こんなところで働いていたとはっ」


女は反対の手で思いっきり手を払い除けて僕の右腕を掴む。

なんて握力だ。手首の骨が痛い。


ナナ「他のお客様のご迷惑になりますのでえ・・・」


髪をツインテールに縛って。

セルのメガネ(だてメガネだな、レンズが一切屈折していない)

フリルのミニスカートの胸を強調したメイド服を着ているが。

カッペ臭さは隠せない。


早足で厨房に引っ込んだウエイトレスはすぐに引き返してきた。


ナナ「お客様?お客様専用にご用意した。当店スペシャルメニューが御座いますのでぇ」

  「どうぞこちらへぇ・・・」


セブン「???」


今度はものすごい力で左手首を掴まれた。い、痛い。


バタンッ!


厨房を通り抜けて。裏口の食材置き場に連れ込まれた。


セブン「なななな」

   「何なんだ?」


バンッ!


僕は壁に乱暴に押し付けられた。

左手で僕の口をふさいで右手に握ったフォークを僕の顔に突きつける女!


セブン「んー!んー!」


殺される!


ナナ「学校以来だわねセブン!あんたとまた会うとはね」

  「良く私がアンだって分かったわねっ?」

  「完璧に変装しきって居たのにっ!」

  「いい?私の生活の邪魔をしないでよ?」

  「私はあんたみたいな金持ちじゃないから」

  「苦労して働いてんのよ、私の正体をばらしたら・・・」

  「夜のチョコン河に沈めるわよっ!?」


セブン「うんうんうん」


口をふさがれたままうなずく僕・・・・ミジメだ。


アン「本気でフォークで目ん玉えぐるわよ?」


怖い!この女は本気だ!関わらないほうが良い。


無言で元居たテーブル席に戻る。

高級スーツがしわだらけだ。


ナナ「お客様、ご注文はお決まりですかぁ?」


セブン「キャラメルクラッチ15色ハンバーガーを」

   「カラシ抜きで、ピクルスも抜いて下さい」

   「あと、びっくりポテトMと美乳シェイクM」


ナナ「ハイ!ご注文ありがとうございますぅ」



カランカラン



セブン「ふう・・・」

   「えらい目にあった。今日は厄日だな」

   「もうこんな店になんか来るもんか!」

   「安い庶民レストランは恐ろしい・・・」

   「午後からの仕事はお父様に頼んでキャンセルしよう」


セブン(ゲッ!道路に停めておいた会社の庶民カーが)

  (駐車違反の張り紙とタイヤ・ロックがかけてある!)

  (あの女(アン・ユウリィ)は魔女だな。怖すぎる・・・)


お父様の会社に何とかしてもらおう。悪夢を見ているようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る