さみしい、あるいはあたたかい世界

 まだ醒めない夢の中


 深い森の奥で、いつか捨てた洋服たちと舞踏会

 満足したら、割れたティーカップでお茶の時間にしましょう

 群青の湖の底では、死んだペットたちとお店やさんごっこ

 ガラス瓶の山を越えてどこまでも行こう

 待っててね、いつか還るその日まで


 まだ、醒めない夢の中



   *



 わたしのハムスターは、家に来て五日で息を引き取った。きび団子そっくりだったから、きびちゃん。わたしの手の上で、どこかへ走るように足を動かしたあと、それからは二度と動かなかった。生き物が物になる瞬間を見て、あぁ、魂なんてないのだ、と感じた。

 わたしは夜の神社に足を運んで、詩が彫られた石碑のわきに、穴を掘った。違法だとわかっていたけれど、物になってしまったきびちゃんを見ていられなくて、何かから逃げるようにただ掘った。軽い体に土をかぶせたときには、手のひらも爪の中も土だらけだった。

 帰って目に入ったのは、宿主をなくしたケージと、たくさん余ったごはん。ベッドに入っても眠れなかった。たったひとりで冷たい地面にうまったきびちゃん。死んでもふわふわだった毛並み。手の上で、あっというまに固くなっていった小さな体。

 いてもたってもいられずに、わたしはきびちゃんを迎えに行った。土にまみれた体は冷えていたけれど、毛並みはふわふわのままだった。きびちゃんはその日のうちに火葬してもらい、ピンクの骨壷におさまった。大きな骨壷に、軽くてちいさな骨。頭蓋骨を見て、わたしはようやく泣くことができた。

 ペットたちは、死ぬと虹の橋のふもとで楽しく遊びながら、飼い主が来るときを待っているという。きびちゃんもそこにいてほしいと思うわたしは、魂なんてないと感じておきながら、その存在を信じたいと願っている。

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