第12話 疲労

あの後はアリアが母の為に兵士をやってるということ、イヴが男兵士達に質問をしていた。。反応はそれぞれだが、楽しい時間だった。そして、ゆっくりと歩いて行き前の部隊が休憩地点に到着して、3時間後に合流することができた。


もちろん、隊長は怒り、貶してきた。しかし、同時に仲間を大切にしたことを少し褒めてくれたのは予想外だった。アリア達はその後食事を済まし、テントを立て寝静まるまでに2時間の時間を有した。


3日目の朝それは今までとは違う雰囲気を醸し出していた。それが何かはわからなかった。近くにイヴを見つけたので近寄る。


「おはようございます。イヴさん」


「おう、アリアか」


「少し変ですね。 どうしたんでしょう?」


「アリアも気づいたか。 見たところ負傷者が出たらしい」


「それは本当ですか?」


「ああ、これでまた仲間が増えたな」


「仲間ですか……」


正直な話、自分達を捨てた者達を仲間とは思いたくはなかった。しかし、ゲルネルツとエリアは怪我をしてなければ見捨てていたと言っていた。だから、チャンスは与えるべきなのかもしれないと苦悩する。


「あまり1人抱え込むなよ。 あたし達は友達なんだからさ」


「ありがとうございます。 でも、大丈夫です」


「そうか、それなら良かった」


静かな時間が過ぎていく。自分は本当は話したいのだろうか。友達だからって信用していいわけじゃないのは前世で痛いほど知っている。だから……


そう考えていると時間になり兵士達は並ぶために集まっていく。


「行くぞアリア」


「はい」


アリアはイヴに続いて歩き出す。今はこんなことを考えてる場合じゃないと自分を正し、この長距離移動を終わらせることだけに集中することにする。


綺麗な列に並び、隊長から朝の罵倒が終わると1日目と2日目と同じように歩き出す。違うのは周りが木だらけの森を今は歩いてることだろう。そして、周りを見ると人数が10人ばかり増えていた。その者達の大半は女性を嫌悪しているようで、フォンティル達ばかりと話している。


「また、2人になってしまいましたね」


「仕方ないさ。 あいつらもあたし達を嫌う奴がいても雰囲気を悪くするだけだという配慮だろ」


「全員とは仲良くできないのですか」


「ああ、無理だ。 男ですら限られてくるのに、女なら余計に無理だ。 そこは諦めろ」


「はい……」


話題が出てこない。いや、疲れて話せないのかもしれない。足を動かし、ひたすら前へ前へと進んでいく。最初は長く感じた1時間は今や半分に感じる。

しかし、まだ最低3日も歩かなければならないという考えが浮かび憂鬱になる。


(瞬間移動できたら楽なんだけ…… それか、魔法を使えるようになったら軽装になるんだけどな……)


自分が魔法を使っているところを想像し、ついにやけてしまう。実際には全く使えないのだが。楽しいことをしていると足が軽くなった気がする。


そして、歩くこと7時間。 それは、最初の休憩の時間に起こった。先に休憩をしている筈の兵士達が何やら揉めているようだった。


「もう無理です! 達成できるわけがなかったんです!」


それはアリア達にも響くほど大きな声だった。気になり近づくと、隊長と何やら言いあってるようだった。


「そうか、それがどうした?」


「私達は隊長が言った通りスピードを上げてきました。 しかし、このままだと怪我人が増えるばかりです。 私は途中の街に寄るべきだと考えます」


「確かにそうかもしれんな」


隊長は今集まっている怪我をした兵士達を見据える。 その顔は先程の意見に賛成の意を唱えているようだった。 しかし、隊長はそんな事は許さない。


「私はお前達に選択をやったはずだ。 しかし、お前らは仲間を捨て最悪な選択をした。 これはお前らの責任だ! 歩けない者がいるなら他の者が助ければいい。 それが兵士になったものの務めだ」


それを言われて何も言い返せない。従うしかないのか、そういう雰囲気が場を包む。


「今回のことは特別に不問としといてやろう。 わかったら限界まで休め! 出発は10分後だ。 解散!」


隊長がその場を離れた時、兵士達がその場に項垂れる。それは怪我をしたまま歩かなければならないという絶望か、それとも隊長に楯突いて何も罰がなかったことのあんしんか、それはわからない。ただ言えることは兵士達不満が徐々に溜まってきているということだ。


そして、休憩の時間が終わり再び進みだす。その道のりは重い。このまま無事に何も起こらずルミサンスに着くことを願うばかりだった。






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