Seeufer 

無事何事もなく砂漠を乗りきったロンメルとアラフェネ一行。次なる地は草木が生い茂るへいげんちほー。

帽子泥棒を追っての3人のチェイスはまだ始まったばかり。この先、何があるのだろうか……


待たせたな!

えっ?お前誰だ?

そりゃないよー(更新遅くてすみません)

その分今回は少し長めなので許して下さいな

────────────────────────

「出発進行なのだ!」

検問と思われる跡地で一休みした後、アライグマの号令で装甲車を発進させる。

今までの砂漠地帯とは違って草木が生い茂るへいげんちほーを進むことになる。

アライグマが言うには帽子泥棒もここを通ったらしい


まぁ、ひとまず今日泊まる場所を探さないとな……

今朝、砂漠を出てからこのへいげんちほーとやらに来るのに相当時間がかかり、もう日も暮れそうだった。

なら、普通に検問の跡地で泊まれば良かったのだが、アライグマ達の強い要望によりもう少し進むことになったのだった。


このへいげんちほーでは、さばくちほーとは違い、一応道らしきものが存在しており、舗装はされておらず、手入れもされていないようだったが、砂漠よりかはスピードを出すことが出来た。

その為、スピードが先程までとは段違いに速くなっていた。


「うぉぉぉ!スゴいのだ!さっきよりも速いのだ!」


「アライさーん。そんなに乗り出すと危ないよー?」


どうやら、またアライグマがはしゃいでいるようだ。

朝からずっと同じテンションで良く疲れないものだな

と、逆に感心してしまう。


「へーきなのだ!アライさんがそんなヘマをやらかすわけが……」


そのとき、ガコンッという大きな音と共に、車体が大きく浮き上がる。


「な、なぁぁぁぁぁっ!?」

直後、アライグマの叫び声が聞こえてくる。


「どうした!何があった!?」

ただ事では無さそうだ。慌てて後ろに問い掛ける。


「たいへんだよー、アライさんが投げたされちゃった!?」

先程まで飄々とした様子だったフェネックが、慌てた様子で言ってくる。


「何、本当か! 今アライはどうなってる!?」

聞こえてきた報告はあまり良いものではない。


「えぇっと、今はそうこうしゃの後ろにしがみついて何とか持ってる感じだよー。」


「どのくらい持ちそうなんだ?」


「持って後数分位だと思うよー。」


シャイセ!……わかった。フェネックはアライを応援してやれ。なるべく速く停止させるが、停止には少し時間がかかりそうだ。済まないが堪えてもらうしかない。」


「わかったー。なんとかしてみるよー。」


そういって、フェネックは砲塔へ戻っていく

「アライさーん。がんばってー。」


「そんなことよりも早く車を停めるように言って欲しいのだ!ふぇー。」


「いまロンメルさんが停めるらしいからそれまでの辛抱だよー。」


フェネックが応援している声が前まで届いてくる

…………


「さてと……」

焦る気持ちを落ち着かせて、ゆっくりとブレーキを踏み込む。急停止してアライグマが投げ出されないようゆっくりとゆっくりと速度を落とす。

幸いにも、道は真っ直ぐで障害物は何もない。


そのまま、ゆっくりと車両は減速していく。

そして、数十秒掛けてようやく停止する。


運転席から飛び降りてアライグマの無事を確認しに行く。

「大丈夫か!?」


「ふぇぇぇぇ」

「だから危ないよーって言ったのに、アライさん気を付けなよー。」

そこには目を回したアライグマとそれを介抱するフェネックがいた。


「大丈夫だったか……アライ、あれほど気を付けろと言ったんだが、これで懲りたか?」


「はい、なのだ…。」

少ししょんぼりした様子でアライグマが言う


「うむ、よろしい。最後に言うことは?」


「言うこと聞かずに乗り出してしまって、ごめんなさいなのだ……」


「よく言った!だが、次は無いからな?」


「わかりましたなのだ!」


「よし、良い返事だな。……まぁ、そろそろ日が暮れそうだし、彼処に見える湖畔で今夜は休憩でいいか?」


「アライさんは構わないのだ!」

「わかったよー。」


アライグマの調子も元に戻ったようだし、大丈夫そうだな。最悪、メンタルケアはフェネックがやってくれるだろう。


「よし、じゃあ乗り込め。湖畔までと言ってもまだまだ遠いぞ!」


そういって装甲車に乗り込む。

再び、出発だ。今日のところは一先ず、山の手前に見える湖畔で一晩越すことにする。流石に1日運転するのは疲れがひどい。


装甲車は夕陽によって橙色に染まる草原を走り抜け、針葉樹や広葉樹の森を抜ける。木の上を時折見上げると、鳥の巣が所々に散見された。全ての巣が鳥のそれではなく、人一人分ほどの大きさにまで大きくなっていたことから、きっとあれらもフレンズ?となった動物の巣なのだろう。そんな考え事をしながら突き進む。アライさんは先程の件で懲りたのか、少し大人しくなっていた。



それから数十分ぐらいだらうか、しばらく森林を走っていたところ樹木の生えて無い開けた場所に出た。

目的地の湖が直ぐ近くまでに見えている。


そのまま、緩やかな斜面を下り、湖の岸辺まで来る。

検問跡を出てから2時間程しか経っていないが、アライグマの件もあり、ドッと疲れが襲ってきた。


車両を停止させ、辺りを伺う。

成る程、どうやらこの湖はビーバーの作り出したものらしい。というのも、下流が大量の木材で塞き止められ、もともと陸地だったのか、樹木や草が水に浸っている箇所も見受けられる。写真で見たビーバーの湖よりか更に大きいが間違いないだろう。

そして、湖の遠くに連なる山々、まるで写真で見たノルウェーのフィヨルドのようだ。


「フェネック、あれは何なのだ?」

「うーん、なんだろう。ロンメルさん、あれが何かわかるかい?」


先に車を降りていたアライグマが何かを見付けたようだ。フェネックに指差された方向を見ると、確かに何か建造物が建っている。ここからではよく見えない。


すかさず、首に掛けていた双眼鏡で見る。

そこに建っていたのは、所謂ログハウスと呼ばれるモノだった。ログハウス自体は珍しく無いだろう。しかし、驚いたのはそのログハウスがだったことだ。今までもここ、ジャパリパークで幾つかの建造物は見てきた。が、何れも数年間放置されたように壁が崩れていたり、植物が繁茂していたりした物が多かった。しかし、あのログハウスには見たところそう言ったものは一切見受けられない。つまり、手入れがされているという証拠だ。


動物がログハウスを造ったなんて話も聞いたことがない。人である確率は非常に高い。


一縷の希望を抱く。

行ってみる価値はあるだろう。


「2人とも、何なら行ってみないか?」

とりあえず、2人に聞いてみる


「アライさんもちょうど気になっていたのだ!」


「いいねぇー。行ってみようかー。」


あっさりと2人から許可が出る。

そのため、直ぐに車両を出しログハウスへ向かう。


とはいっても数キロも離れていないので、そんなに時間は掛からないだろう。

予想通り、数分でログハウスに到着した。


ブレーキをかけ、ログハウスの前で停車する。


と同時にアライグマ達は車両から飛び降りてログハウスに近づいていった。


私は一旦、車両からログハウスを観察する


先程、双眼鏡で見たときはわからなかったが、岸から少し離れた小島にログハウスは建っていた。

木材も良いものを使っており、結構な衝撃にも耐えられそうな頑丈な作りになっている。場所も良好で、見張らしもよく、入り口も岸の地下通路1ヶ所のみ。

まさしく天然の要塞である。


っといかん、軍事戦略目線で見てしまっている。

ここはあの戦争と関係がない場所だ。そんな目線で物を見るべきではないだろう。


とまぁ、それでも

「このログハウスを作った奴は優秀なんだろうな…」


「そう思うでありますか?」


「あぁ、まずは立地だろう。見張らしもよく、景色も良いからな。此処を選んだのは良い目をしてる。」


「ほうほう、他には何があるのでありますか?」


「あげるなら当然、建物の構造だろう。二階建て、更には地下通路といった…………誰だ貴様は!?」


普通に喋っていたが、アライグマ達はログハウス前に居る。ここで声がするのはおかしい。考えられるのは別の誰か。


一旦距離を取り、ホルスターのヴァルターP-38自動拳銃に手を掛け、振り返る。


そこにいたのは例に漏れず、尻尾と耳を生やした2人の少女フレンズであった。


「君たち、名前は?」

フレンズならば、特に危害は加えてこないだろう。

P-38に掛けていた手を解いて、2人に問いかける。


「紹介が遅れました。アメリカビーバーっす。」

茶色のジャケットを羽織った娘が答える。声が小さくすこしばかり気が弱そうな娘だ……


「オグロプレーリードッグであります!」

続けて、カーディガンを着ている娘が答える。此方は先程の娘と違い、とても元気そうな娘だ。


「そうか、大声を出してすまない。私はエルヴィン・ロンメルだ。ロンメルとでも呼んでくれればいい。」


「よ、よろしくっす。」

「よろしくであります!」


何とも対照的な組み合わせだ。アライさんとフェネックの時も思ったが、ここはそう言ったコンビが多いのだろうか。片方が持っていないものを片方が埋める。

面白いものだ。


「ロンメルさーん!だいじょーぶなのだ?」

「なにかあったのー?」


そこへ、アライグマ達2人が自分の叫び声を聞いてか駆け寄ってくる。


「いや、大丈夫だ。少し大声を出してしまっただけだ。」


「そうなのだ?とりあえず、ロンメルさんに何も無くて良かったのだ!」


「ロンメルさんも以外と茶目っ気があるんだねー。……所でそのお2人は誰なのかなー?」


「この2人か?2人とはさっきログハウスを眺めてたときに会ったんだ。」

「はじめまして。俺っちはアメリカビーバーっす!」

「お初にお目にかかります。オグロプレーリードッグであります!」


「なるほどー。オグロプレーリードッグさんにー、ビーバーさんか。よろしくー。私はフェネックさー。」

「アライさんなのだ!よろしくなのだ!」


軽く4人が自己紹介を済ませる。


「ではでは、皆さんにご挨拶をさせて貰いたいのであります!」


プレーリードッグが各人の顔を凝視しながら言う。


はて、挨拶?握手のことだろうか。そう思い右手を前に出す。しかし、顔を凝視する必要があるのだろうか

とそんな疑問が浮かぶ……


そこへプレーリードッグが前に出てきて、その右手を取ろうとする……ことなく、私の両肩を掴む


「は?」

そしてそのまま



キスをした


………………

まさか、家族以外とキスをすることになるとは……

他の娘達も顔を真っ赤にしてこちらをみている。

やはり、彼女達には少々刺激が強すぎるのかもしれない。というより、挨拶としてなら頬にするべきではなかろうか。そんなどうでもいい疑問が頭を過る。


そして、私との『ご挨拶』とやらが終わった所で、プレーリードッグは他の標的、すなわちアライさんとフェネックに狙いをつける。ジリジリと近付いていくその姿は少しばかり不気味なオーラが滲み出ている。


フェネックが後退りする。

アライグマは腰が抜けたのか、蛇に睨まれたカエルのように全く動かない。


狙いをアライグマに着けたようだ。

どんどん近付いていく


そして遂にアライグマに『ご挨拶』をしようと手を伸ばしたその時

「アライさん危ない!!」


フェネックが身を挺してプレーリードッグとアライさんの間に入り込む


が、今度は割り込んだフェネックの肩を掴む


「ふぇ?」

予想外だったのかフェネックから一瞬、変な声が漏れる。

そのままプレーリードッグがフェネックにキスをする


「──────────────────!!」


声にならない悲鳴が聞こえてくる。

数秒程経ってプレーリードッグが顔を離す。

顔を真っ赤にしてフェネックがその場に崩れ落ちる


プレーリードッグは残る標的、アライさんに狙いを定める


アライグマはまだ腰が抜けたままなのか動いていない


ジワリジワリとプレーリードッグが近付く

アライグマが這うようにして逃げようとする……


が、その抵抗も虚しく、両肩を掴まれ……


顔を近づけ


『ご挨拶』をした


────────────────────────

数時間後 ビーバーとプレーリードッグの家


「ほんとに良いお家だねー。」


「よかったら泊まっていくと良いっすよ!」


「それより続きを早く聞かせて であります!」


「それで!サバンナでその帽子を見つけたとき!そこを通ったボスがなんと喋りだしたのだー!」

アライさんが手を広げて大袈裟にジェスチャーして見せる……


「はっ!おれっちも見たっすよ。ボスが喋るところ」


「えぇーー!!」


「アライさんには何て言ったでありますか?」


「えっとぉ……なんだっけフェネック?」


「フレンズや私たちにとって、とても大切なものが埋設されていることがわかりました。その場所は、このジャパリパークのー、あの火山から……」



…………

結局あの後、固まっていたアメリカビーバーが復活しアライグマに『ご挨拶』しているところを止め、小一時間程説教をしていた。


その間、私は地面に崩れ落ちたフェネックと放心状態のアライグマを介抱していた。


その介もあってかアライグマとフェネックは早々に復活し、今ではこの通り元気に喋っている。


「……って、確かしゃべってたよー。」


「おぉ、流石フェネックなのだ!」


「結構難しいこと喋っていたっすね!」


「ふっふーん、アライさんは……」


今はアライグマの武勇伝を聞いている。

私は初めて会ったときにあらかた聞いていたから内容は知っているが、ビーバー達は目を輝かせて聞いているようだ。何でも、フレンズは自分の縄張りからあまり出ることがないため、アライグマのようなパークを冒険して廻っているフレンズのお話は貴重で面白いらしい。どの世界でも娯楽に餓えているのは変わらないようだ……


「へぇー。すごいっすねー!」


「アライさんは凄いであります!もっとお話を聞かせて欲しいであります!」


「しょうがないなー。えぇっと他にはー。」


「失礼、ちょっと外を見てきても良いか?」

話が区切りを迎えたところで、すこし外出する旨を伝える。


「どうしたのだ?もしかしてアライさんのお話が詰まらなかったのだ?」


「いや、そんなことはない。ただ、ちょっと外の空気を吸いたくなってな?」

そういって梯子を降り、地下道を通り陸地へ行く。

辺りは完全に真っ暗で月や星の明かりがなければ完全に何も見えない。この中を懐中電灯を照らしながら進む……


そして、たどり着いたのはSd.kfz.232。

その近くに座り込む。

視界に美しい星空が入り込む。

湖が星を鏡のように反射させ、その絶景を絶景たらしめる。アライグマのお話を抜けてきたのは、ある意味配慮のつもりだ。フレンズといえども、女性だ。その女性のパーティに男が1人居るのでは話しづらいだろう。そう思い抜けてきた。まぁ、この絶景を観るためでもあるのだが……


結局、ログハウスは人間が管理しているわけでは無く、ビーバーとプレーリードッグが最近造り上げた物らしい。なんとなく察してはいたがやはり……


ジャパリパークに人は居ないのかもしれない


そんな気がしてきた。

いや、確定だろう。

それでも、毎晩通信機を使うことにする。

意味がないと解ってはいるが、やはり人がいないとは認めたくないな……


十分ほど経過した頃だろうか。

後ろに気配を感じた。


「となり、いいかなー?」


どうやらフェネックのようだ。


「別に構わないぞ?アライさん達の所に居なくて良いのか?」


「アライさん達は、もう眠りに入りそうだからね。」


「フェネックは寝なくても良いのか?」


「うーん。ちょっと外に出てみたくなってねー。」


「……そうか。」


…………


沈黙が訪れる。


双方とも静かに星空を眺めている。

星の光を遮るものが一切無い世界。

それが映し出す満点の星空は本当に綺麗だった。

そういえば、夜間の進撃中でも、このくらいに綺麗な星空を見たな……


「そういえば、さっきはアライさんを助けてくれてありがとねー?」

不意にフェネックから話し掛けられる


「さっき…?あぁ、別に大した事じゃないしお礼なんていらないぞ?」


「それでも一応、受け取っておいてよー?」


「わかった。だが、あれはフェネックが適切に情報を教えてくれたから成し遂げたのであって、一番誉められるべきはフェネック、君だと私は思うよ。」


「そんなことないよー?」


「フェネックも礼ぐらい素直に受け取れ…!」

起き上がってフェネックの頭を撫でる

昔息子にやっていたように……


「ふぇ?」

フェネックから先程のように拍子抜けした声が漏れる

が、抵抗はしない


顔を俯かせて、尚且つ闇に紛れているが、顔が紅くなっているのだろうか?

よくわからないがそんな気がした。

喜んでくれているなら良いが……


髪を撫でながらもう一度星を見る。

今日も一段と綺麗な夜空だった





「うーん。撫でられるのも悪くはないかな……」

ふとそんな呟きが風に乗って聞こえた気がした……


────────────────────────

『Seeufer(湖畔)』end


どうもお久しぶりです1498です。

投稿がいつもいつも遅くて申し訳ないです。


今回は一部悪のりしたところもありますが楽しめていただけたのなら幸いです。

いつも通り稚拙な文章ですが、頑張って腕を上げていきたいので是非、アドバイス、感想、誤字等々ありましたらお願いします。


6月5日 最後の文章で繋ぎのおかしな箇所を修正


8月8日 大幅修正

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