驚の39 街中での遭遇



 結局アリサが起きたのはお昼をすっかり過ぎた頃だった。

 正確には起きたのではなく叩き起こされたのだが。


 当初の予定通り、俺たちは街の中心部に来たのだが取り立てて何か目的があるわけでもなくメインストリートをぶらぶらと歩いている。


「それで、どうするんだ?今から。とりあえずカラオケでも行くか?」

「そうだね、特に何かしたいことがあるわけでもないしね」

 近くのビルに入っている大手チェーンのカラオケに行くことにする。

「ミントくんは地元なんだよね?」

「ん〜まぁ地元と言えば地元だが、俺は山手の方だったからな」

「こっちにはあんまり来なかったの?」

「そうだなぁ、寧ろ中学を卒業してからの方が来てる気がするな」

 俺はそう言っていつも通り、繋がれたら手を挙げてみせる。


「はいはい、ご馳走さまです〜」

 アリサがそう言って膨れるが顔は笑っている。

 こいつはこいつで何かと気を使ってくれてはいるんだよな。


 カラオケボックスで3時間。

 さすがにこの人数だと中々順番が回ってこなかったりするので結構な時間をカラオケボックスで過ごすことになった。


 意外なと言えばちょっと失礼だが、駿は演歌を歌いまくり詩織はハードロックでシャウトしていた。

 ミドリンは何でも器用に歌うタイプで沙織はどちらかと言えば聴いて楽しむタイプだった。


 アリサはと言うとマラカスとタンバリンを振り回していたし、言葉はしっとりと聴かせる歌が上手い。



「いやぁしかし意外だったね」

「うん、僕もびっくりしたよ」

「人って意外性のある方が面白いのよね」

「・・・・軽くへこんでるんだぞ」


「「「まさかミントくんが音痴だとはね〜」」」


 はいはい、俺は音痴ですよ。それが何か?

 言葉が、ポンポンと肩を叩いてくれたのが痛かった。



 その後は、当然のようにボーリングに来ている。

 時間的にもまだ混み合う時間じゃなかったので3レーン借りて勝負することになった。


 俺と言葉、ミドリンと沙織、駿に詩織とアリサという当然といえば当然の分かれ方になる。


 ここでも駿は意外な才能を発揮した。


「マジかよ?またストライクか!」

「言っとくけど僕、ボーリングには自信あるからね」

 駿がドヤ顔で球を拭きながら振り返る。


「忘れてたわ・・・駿ってああ見えて運動神経抜群なのよ」

「先に言えよな・・・」

 結果は駿の圧勝だった。

「まぁこんなもんだね」

「くっ、なんか腹立つ・・・」

 同じチームなのに何故かアリサが無駄に駿に対抗意識を持っていたのが笑える。


 その後、ボーリングを終えて晩御飯をどこで食べるか相談してるときだった。


「もしかしてミントか?」

「ん?」

 不意に声を掛けられて俺が振り返るとちょっとイカツイ感じの男達がこちらに歩いてくるところだった。


「おおっ!やっぱミントじゃねーか!久しぶりだなぁ!」

 その中でも一際目立つ大男。

 派手な金髪にサングラス、ラッパー宜しくなダブダブの服にチャラチャラしたアクセサリー。


「なんだ・・・ナツかよ」

「おいおい、なんだはねーだろ?」

「ははは、なんだで充分だろ?」

 俺は笑いながら拳を突き出すとナツもゴツゴツした指輪だらけの拳を突き出して合わせる。


「えっと、ミントくん。知り合い?」

「ああ、ちょっとした顔見知りだ」

 ミドリンが少し引きつった笑いを浮かべ聞いてくる。

 まぁそれはそうだろう。

 明らかにマトモなヤツには見えないからな。


 ナツは俺の後ろにいるミドリン達をサングラス越しにぐるっと見てから嬉しそうな笑いを浮かべて俺の肩を抱く。

「はっはっは、なんだミントもちゃんと学生さんしてんじゃねーか、安心したぜ」

「うるせぇ、お前に言われたかねーよ」


 俺とナツが親しげに話していると一緒にいた男がナツに問いかける。

「あの・・・ナツさん、そいつは?」

「ああ?そいつ?てめぇ口の聞き方に気をつけろよ!こいつはな、俺の大親友だぞ!」

「ひっ!す、すみません!」

「おい、いつから俺はお前の大親友になったんだ?」

「おいおい、俺とお前の仲だろ?」

「どんな仲だよ・・・」


 俺は肩に回してきた手を払いのけてミドリン達に先に晩御飯を食べに行ってくれるように頼む。

「悪いな、すぐに行くから」

「う、うん、じゃあ先に行ってるね」

 駿もちょっと引きつった笑いをしてミドリン達と一緒にボーリング場を出て行く。


「お前も一緒に行っていいぞ」

「どうして?」

「いや、どうしてって・・・」

「わたしは別に何ともないから大丈夫よ」

 言葉はそう言って俺の隣に来ていつも通り俺の手に指を絡ませた。


「なっ!ミント!お前!その子は彼女なのか?彼女なのか!」

「うるせぇよ、バカ。デカイ声出すなよ」

「はじめまして、柊 言葉といいます」

「あ、あの、は、はじめまして。俺は、あ、いや、ぼ、僕は芹澤 夏せりざわ なつといいます。はい」

「何緊張してんだよ?僕ってなんだ?僕って」

「いや、お前なぁ、こんな美人の彼女がいるならいるって言えよな」

「だから何でお前に言わなきゃならないんだよ」

「親友だろ〜?」

「あなたの親友なの?変わった友達がいるのね」

「はい!親友です!大親友です!」


 はぁ、地元に来ると誰かには会うかもと思ってたが、よりによってこいつとはなぁ。

 俺はため息をついてどうしたものかと考えていた。










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