楽の35 目の保養とはこのことか



 バーベキューも無事にかどうかは疑問が残るが終了し遊び疲れたのか早々とみんな就寝してしまった。


 1日目の夜、俺は昼寝の影響か中々寝付けなくベッドに寝転がりぼんやりと天井を見つめていた。


 こうしていると何気なくも言葉のことを考えている自分に気づく。

 多分、おそらく、きっと、言葉に対して恋愛感情は抱いていないはずだ。

 それは言葉も同じだと思う。

 側から見たらそれはそれは仲の良い恋人同士に見えることだろうけど。

 実際、していることは完全にそうなのだから仕方ないとは思う。


 けどそれとは別に言葉にはおそらく人を好きになるという感情はまだないと俺は思っている。

 半年間一緒にかなりの時間を過ごしてきて俺なりに言葉のことを考えてきた。


 喜怒哀楽。


 今の言葉には"哀"と少しの"怒"、それに僅かばかりの"楽"の感情があるように思う。

 あの日、言葉と約束したことはまだ半分も果たせていない。

 この先、言葉が嬉しさを知り楽しさを分かったとき言葉が俺を必要とするかはわからない。

 寂しい気もするが、それもまた言葉が決めることであり俺が口出しすることでもないだろう。


 願わくば・・・


 そこまで考えて俺はベッドの中で首を振る。


「やめとこう。今は考えないほうがいい」

 無い物ねだりになりかねない妄想をしかけてそれを頭の片隅に追いやる。


 部屋に入る月明かりが次第に欠けていき暗闇に包まれる頃、俺はようやく眠りについた。



「さぁ!今日はMYプライベートビーチで海を堪能しようじゃないか!」

「朝から元気ね?ミドリンは」

「羨ましいわね・・・」

 低血圧で朝が弱いみたいなアリサと詩織がため息混じりにミドリンを眺める。


「ってことは私の悩殺水着の出番てわけね」

「おぉぅ!それは僕だけに見せて欲しかったけど!」

「ミドリンにはまた別のを見せてあげるわよ」

「センキュー!沙織くん!マイスイートハニー!」


「バカね・・・」

「バカだな」

「バカップルよね」

「全くだ」


 すっかりバカップルなミドリンと沙織をやれやれと生暖かく見守る俺たち。


「あなたたちには言われたくないと思うけど・・」

「アリサさん、それみんな思ってるけど言わないだけだから」

 アリサと駿が何やら失礼な事を言っているがこの際知らん顔を決め込む。


 朝食を食べてリビングでひとしきり雑談をしてから着替えのために一旦部屋に戻る。


 男子はさっさと着替えて砂浜にやってきたのだが女子は中々姿を見せない。

 知らない間に砂浜にはビーチパラソルが出されていて飲み物まで用意されていた。


「なぁ駿、駿は誰の水着が一番興味あるんだ?」

「え?僕?誰って・・・べ、別に誰のも興味ないから!」

「ふ〜ん、沙織・・はミドリンだし、詩織・・は違ったか。アリサ・・・ほぉ?駿はアリサの水着か・・」

 俺が名前を挙げていくと実にわかりやすく顔色が変わる駿。


「ミントくんってたまに意地悪だよね?」

「ははは、気のせいだ!気のせい」

 しばらくそんな感じで砂浜でくつろいでいると女子たちが賑やかに話しながら歩いてきた。


「oh!Yes!ビューティホー!!」

「うわぁ・・・」

 ミドリンが平常運転で大袈裟に喜び、駿は直視出来ないのか赤くなって下を向いてしまった。


「沙織くん!ビューティホー!ビューティホー!」

「ち、ちょっと!大袈裟よっ!」

 沙織は元々の引き締まった体型に青のビキニが非常に良く似合っている。健康的な印象が強いので布面積が少なくてもいやらしく感じない。

 対照的に詩織はセパレートタイプの水着にショールとパレオを身につけているのでちょっと露出の多い服みたいな感じだ。


「あまりこういった格好はしませんから・・・」

 そう言って沙織の後ろに隠れる詩織。


「ミント!どうよっ!」

「まぁ妥当なとこだな」

「ちょっと!反応薄くない?」

「だってなぁ・・・」

 アリサは薄いピンクのビキニなのだが、いかんせん体型がスレンダーすぎる。

 つまり貧乳だ。

 なんというか、頑張りすぎ?みたいなことになっていてむしろ気の毒だったりする。


「あ、アリサさん、すごく似合ってます。か、可愛いと思います」

 駿が真っ赤になってアリサを褒めている。

「なんか釈然としないわね」

 眼鏡をしていないので駿の表情がはっきりと見えないのか話す距離が変に近いので駿がたまらず後ずさりしている。


「ミント、どうかしら?」

 最後は言葉なのだが・・・

「お前、よくそれにしようと思ったな?」

「そう?おかしいかしら?」

「おかしいとかじゃなくてさ・・・まぁいいけど」

 そう言って小首を傾げる言葉は黒のビキニなのだが上も下も横紐で結ぶタイプなので何というか目のやり場に困る。


 色白の肌に黒が映えて何ともエロティックだ。


「あなたが気に入ってくれればそれでいいわ」

「お前な、色々勘違いしそうになるからやめてくれ」

「本心だけど?」


 ひとしきりワイワイと盛り上がったあとはそれぞれに自由に海を満喫する。

 いつのまにか執事さんが飲み物を交換してくれたり軽食を持ってきてくれたりと、いたせりつくせりな時間を過ごした。










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