驚の6 妹は残念な人だった


この学校は中高があるマンモス校だけあって、校舎を出てから校門までの距離が半端なく長い。

道沿いに部室が立ち並びまるで街並みみたいになっている。


グラウンドでは、野球部やサッカー部が練習に勤しんでいる。


「青春だな」

そんな部活に励む連中を横目に校門を目指していたときだ。


「せんぱ〜い!」

始めはまさか俺が呼ばれているなんて思いもしなかった。

この学校に後輩なんていないから無視して歩いていた。


「せんぱ〜い!ミントせんぱ〜い!」

「はっ?俺か?」


名前を呼ばれて振り向くと女の子が2人こっちに走ってきていた。


「はぁはぁ、知らん顔するなんてひどくないですか?」

先に追い付いてきた子が、プクッと頬を膨らませて俺を睨む。

「は?誰だ?おまえ?人違いじゃないか?」


ベリーショートの結構、いやかなり可愛い子だ。あれ?こいつどっかで見たことあるような・・・誰だっけ?


「え〜〜っ!ボクが分かんないですか?ホラホラ!よ〜く見てくださいよぉ」

まさかのボクっ娘!

いやいや、そこじゃないだろ。俺。

俺の前でスカートをヒラヒラさせてクルクル回ってるボクっ娘。ぱんつ見えるぞ。


「そう言われてもなぁ?どっかで見たこともあるような気はするが・・・知らん」

「おっかしいなぁ、ボクよく似てるって言われるからわかると思っ、あいた!」

「わかるわけないでしょ!おバカ!」

クルクル回ってたボクっ娘にチョップを打ち込んだのはもう1人の女の子で、こちらは、三つ編みの委員長タイプのこれまた中々可愛い子だ。


「いたいなぁ、アホになったらどうするんだよ!チリちゃん」

「あんたはそれ以上アホにはならないから!それに私はチリじゃなくて千里よ!」


「あ〜悪い漫才なら他所でやってくれ、じゃ」

危ない人には関わらないほうがいいよな。

俺は素知らぬ顔で帰ろうとしたのだか。


「せんぱ〜い!ほんとにわかんないですかぁ?」

「わかるわけないだろ?だから誰だよ?おまえ」


何となく見覚えはあるがやっぱりわからん。


「いい加減にしなさい!すみません、先輩。この子ちょっとアレなんで後でよく言っておきますから」

「え〜〜チリちゃん、アレってまるでボクが駄目な子みたいじゃん」

「控えめに言っても駄目な子です!では先輩、お騒がせしてすみませんでした。ほら!行くわよ、ユズ」

「せんぱ〜い!お達者で〜〜!」


ボクっ娘は、チリと呼んでいた子に引きずられて戻っていった。


「なんだったんだ?今のは」


制服からして中等部の生徒だろうけど心当たりがないな。まっいいか。


俺は気を取り直して再び校門への道を歩いていった。



「ただいま」

と一応は言っては見るものの一人暮らしだから返事があるわけもなく。


家から通えない距離ではないのだがさすがに毎日となると厳しいものがあったので両親に頼んだらあっさりと許可してくれた。

ワンルームなので家賃もそれなりだし、陽当たりもよく結構気に入っている。


自慢じゃないが俺は料理は全く出来ない。故にインスタントかコンビニばかりになってしまう。


「一人暮らしするならちょっとは料理くらい出来ないといずれ餓死しそうだな」

駿あたりなんかは料理出来そうだけど、そういえば詩織に沙織もお弁当を交代で作ってるみたいだし結構出来るんだろうな。

後は、言葉は・・・料理してるイメージがないな。

今度聞いてみようかな。


冷蔵庫を開けて中を見てみる。


スポーツ飲料とバターに梅干。

料理どころじゃないな。男は諦めが肝心、俺はさっさと諦めて近所のホットモッ◯に弁当を買いに行った。


部屋でホットモッ◯の唐揚弁当を食べながらぼんやりとテレビを見る。

中々に怠惰で贅沢な時間だ。


俺はこの怠惰な時間を大切に過ごした。


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