アルプスの天然水と幽霊

薄汚れたざらざらの柱

どこかで聞いた旋律を

わたしはここで聞いている

それは自販機で天然水を買うのと

そう変わらない手間で

遠いアルプス山脈を幻視した


ここよりもずっと宇宙に近い

大きな音が芯を揺らした

派手な楽団の音楽は幽霊にも似て

水を飲んだわたしは

コイン数枚分軽くなったわたしは

シュークリームに閉じ込められたがる幼子のような

幽霊に近づいていて

安易なかたちの夢を見た


それは薄汚れたコインを差し出したから

ざらざらのシュークリームからは

混ざりけのないアルプス山脈が

幼子の数だけ

わたしは幽霊に近づいていて

それは派手な楽団の音楽に近づいていくことと等しい


アルプス山脈よりもずっと宇宙に近いここなら

好きな歌が歌えそうな気がする

積もった雪をかき分けるのと

そう変わらない手間で

水を飲んだわたしは

安易なかたちの夢を見た

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