聖女の謝罪方法は新王都で

 魔物の襲撃から1か月後、聖なる村は名を残した状態で王都へと変貌を遂げるべく騎士団の詰め所が作られ、小さいながらも王城の建設に着手し、罪人として収監されていた元王と王妃、そして第一王子が洞窟を加工して作った牢屋へと移送される事となった。


 今日まで待って見たけど王家から謝罪の文章なり立て札なりが一切、無かったわねぇ。


 これ…罪の意識なんて皆無とか?信じらんない。


「サクヤ」


「アレン王子?今日はどうされたのですか。

 確か王城に残されて居る王様とお妃様、

 第一王子様、宰相様を洞窟牢に移送すると、

 言われてませんでしたでしょうか」


(どんな顔か見てみたい気もするけど、

 人をスルーした第一王子の顔なぞ見たくないわね)


「ああ、その事で相談があってな」


「相談・・・ですか」


(まさか移送を手伝ってとか言うのかしら。

 それは嫌なんだけどな)


「ああ両親が犯してしまった罪を償う手段として、

 良い方法は無いだろうか、と思ったのだ」


「犯してしまった罪の贖罪しょくざい

 …て事で合って居ますか?」


(何に対しての謝罪なのかしら)


「1つ第一王子が見向きもしなかった事への謝罪、

 2つ王が犯罪を犯して居ないにも関わらず、

 手配してしまった事への謝罪、

 3つ謝罪するのが遅れてしまった事への謝罪…

 こんな所だとは思うのだが、

 私1人では謝罪を何処まで広げれば良いのか…」


 へぇ~…意外と考え抜いていたのね。


 そうなると許す方向で考えを巡らせて答えを出すとするか。


「それで十分だと思われます。

 俺は詳しい内情を知りませんが、

 聖女様が存命の場合、

 発表まで何も行動を起こされていないと、

 怒り心頭って所でしょう。

 その点は最後の謝罪が伝われば、

 許して貰える可能性は高くなるとは思いますよ」


 こんなトコでしょ。


「そうなのか?」


「俺に聞いてどうするのですか、

 俺は聖女様じゃありません。

 元騎士ではありますが、ただの村人です」


「す、すまん」


「その謝罪は手配書を見た事がありますが、

 あの方法で知らしめるのですか?

 それとも他の方法で通達するのですか?」


 まあ手配書の方法が一番わかりやすい方法だけど、第一王子の罪が何になったのか知りたいかも。


「手配書が過ちだったと判って貰う為にも、

 同じ方法が良いと思うのだ。

 それから両親の移送を手伝ってはくれないだろうか?

 聖女様が何処かで生きておられるのなら、

 この村の洞窟牢に収監されたと噂で聞き及んで貰えれば、

 村に来てくれる可能性出て来るんじゃないか?」


「そうなってくれると有難いって所でしょうね。

 移送の手伝いは場所を教えていませんので請け負いますよ」


「ただ聖女様は護衛も持たないまま、

 聖なる村を目指して出立された、

 とだけ聞いたのだが、そこからの消息が全く…」


「逆に死亡した…とも聞いていないのでしょう?」


「え…?!」


「行方が判らないってだけで、

 死んだと言う噂は無い。

 だったら誰かの保護下にいる可能性すら、

 あるのでは無いか、と言う事ですよ」


「誰かに保護を…」


「手配書が届かない地域で保護されていたら、

 意味も成さないでしょうけれど…」


「隣国の可能性もあると言うのか?!」


「どうでしょうか。

 俺は聖女様では無いですから、

 何処へ向かわれたか想像できかねますが、

 この森は隣国にも繋がっています…よね?」


「あ、ああ!何て事だ!」


「どうしたんです?

 隣国が保護していた場合、

 不都合でもある…

 「あり過ぎるんだ!

  かの国は聖女を見とがめた場合、

  凌辱し支配の魔法で雁字搦がんじがらめで、

  閉じ込めてしまうと噂が」

 はぁ!?」


 そんな国に行く訳ないでしょ!と言えないのよねぇ。


 行って無い可能性を引き出す方法…。


「逆にグラシオール国の何処かで、

 助けてくれる王子様を待っているかも知れませんが…」


 これが妥当かな?


「え?」


「ま、予測ですよ。

 聖なる村と呼ばれる地に、

 聖女様が戻って来る可能性は残っているでしょう。

 謝罪書をグラシオール全域に行き渡らせて見れば宜しいかと…」


「そ、そうだな」


 こうなると私が聖女として王子様の前に姿を現す時期も早まってしまうわね。

仕方ないかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る