第44話 親父タカは何を考えてる?

「今川愛華さんですか?」

「そう、です?どちら様?」

「失礼!小山隆司と申します、此方は家内の静香」

「小山さん?何処かで、お会いしましたか?」

「いえ、初めてお会いします、こんな事をしている者です」

 今川さんは、名刺を渡すと、目を見開いて、固まってしまいました。


「山岡総合病院理事長、小山電機代表取締社長、小山建設社長、ホームセンター小山チェーン社長??様が、私に何の御用でしょう?」

「私の息子、登が持っていた写真です、この女性に見覚え有りますか?」

「·····綺麗な人ですね、見覚えあるような·····いえ、知らないです」

「そう、ですか」


 例え夫婦者でも、見ず知らずの者が突然声を掛ければ、警戒するはず。

 肩書きと言うものは有り難いものです、勤め先の大社長と知れば、今川さん、すんなり、同行してくれました。


 実の娘を、忘れてしまって居る事、新開発のVR装置について、詳しく説明しました。

 実際私も、息子の話は、半信半疑の所があったが、VR世界に入る事で、全て真実と確信出来た事等、「百聞は一見に然り」です、娘さんを、思い出す為にも、是非VR世界に同行して下さい。

 幸い今川さんは、超有名なFF、ファイナルフェアリーの、ゲーム体験者。

 娘の事は信じて居なくても、ゲーム世界に入って、実体験が出来る事に興味を持ったようで、同行する事を了解してくれました。


 小山邸、世間一般では、大邸宅の部類です、今川さんは応接室に通され

(一部屋しかない賃貸マンション、私の住まいと大違い·····)

「仕事は店長に連絡して置きました、私の用事をしてもらってる事になってます」

「は?はい·····」

「そんなに、緊張しなくて大丈夫よ、私とケーブル繋いで、寝るだけの簡単なお仕事よ」


 スキルの発生は、個人差が大きいようで、私も静香もLV20に上げたが、同行が発生したのは、家内の静香だけだった、私はLV30発生だろうな。

 収納はLV15発生だった。



 昼日中からお酒?と思いながら、美味しく頂いたワインのお陰、愛華は気持ち良くグッスリ眠れたはずが、知らない部屋のベッドに居ました。

「·····あっ!そうか!!これがVR世界か!!!」

 いつもの一寸ハスキーな自分の声と違い可愛い声が出ました。

「あ~~、本日は晴天なり、??私の声じゃない!!!」


「アイちゃん、ようこそミネルバの世界に」

「あ、貴女、誰?」

「小山の家内、この世界では、シズよ」


 タカとシズに連れられて、サラさんが経営する食堂で朝食。

「タカとシズ!今日はチャラと一緒じゃ無いのか、アイを引き連れ両手に花ってか?」

「サラさん、朝食3人前頼む!!」「あいよ!!」

「タカさん、サラさん何で私の名前知ってるの?」

「タカで良いよ!不思議だけど、息子が言うには、この世界の神か何かが、補正してるそうだ」

「ふ~ん、ゲームだから、そう言う事もあるかな」

「それも違うらしい、ゲームじゃ無く、この世界は現実世界らしい、住民は完全な人間で、私達訪問者が、作り物だそうだ」

「作り物?」

「貴女の娘の、ミアは永住した為、この世界の人間になれた」

「!!!何で娘の心愛を忘れてたんだろ?思い出したよ!!!この世界に娘が居る!!!」


 ポンとミルク、定番の朝食らしい物が出された。

「美味しい!!!何これ?味がハッキリ分かるわ!!!」

「なんだい!大声だして、何かい、お前ら悪ガキは、私の料理、誉めちぎる遊びでも始めたのかい!!」

「本当にびっくりしてるの!!!とっても美味しくて」

「しょうが無いね、あんた等もダダにしてあげるよ」

「えっ?私達も?」

「昨日も、チャラとミサそれにツネオの朝食、タダにしてやった」

「ミサ?ツネオ?」

「あんた等の仲間だろ!!チャラといつもつるんでる」


 登、誰を同行した?

 ミサは坂本だろう、ツネオが分からん。


「サラさん、ご馳走さま!!」

「皆!ワーム狩りに行くぞ」

「タカ、二人を守ってやるんだよ!!」

「サラさん、シズの方が強えぇよ!!」

「男なら、守ってやれ!!」

「ああ、頑張る」

 ミサさんが、バンバン背中を叩いて見送ってくれ、背中はすごく痛かった。


「トムの武器屋に行くよ」

「アイは武器何にする?」

「私、学生の時アーチェリーやってた」

「弓矢買おう!!」


「トムさん、アイに使える弓矢ってある?」

「おうっ!これなんかお勧めだ!!」

「·····うん!良さそう!!」

「アダンの実カートリッジ込みで、ん、1000Gで良いぞ」

 弓矢が800G、アダンの実入りのカートリッジが750Gのはず。

 って直ぐに計算するの、職業病だな。

「トムさん、有り難う!!」


「今は、戦闘に慣れるだけにしておくよ、本式はインストールしてから」

「インストール?」

「任せて呉れたら、良いから」

「ワーム狩りに行きます、気持ち悪い魔物だけど、弱いから落ち着いて戦って!!」


 砂丘に着きました。

 ワームは相変わらず、ウネウネ気持ち悪い。

 アイは弓の経験者らしく、順調にLVを上げました。




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